先日米国・ラスベガスで開催されたCES 2024に弊社東京オフィスで事業開発ディレクターを務める森ポールが参加してきました!今回はその様子を数々の写真とともに参加レポートとしてまとめていますので、ぜひご覧ください。
はじめに
今回、私はテクノロジーエコシステムの視察に加え、弊社のクライアントである日本大手重工業メーカー並びに大手飲料メーカーを現地でサポートするため、CESに参加してきました。同時に、米国側からも例年CESに参加している弊社のベテランメンバーが集結し、様々な領域におけるスタートアップとの関係構築や意見交換を実施しました。
実は私は今回が初めての参加でしたが、現地で得たCESに関する印象や新たな学びを皆様とシェアさせていただきたいと思います。
CESについて
1967年にニューヨークで初めて開催されたCESは、もともと「Consumer Electronics Show」という名称で、主に家電を中心とした技術の展示会としてスタートしました。それから毎年のように世界のトップ企業が最先端のテクノロジーをアピールする場所として知名度をあげてきました。コロナ禍では一時期、イベントの中止やオンラインでの開催が続いていましたが、昨年に続きリアルイベントとしての開催が実現した今年は、13.5万人以上の参加者と4300社程の出展企業がラスベガスに集う大規模イベントとなりました。
イントラリンクからは例年、北米メンバーを中心に現地のスタートアップ企業などと関係構築を行なってきましたが、今年は私を含め、合計6名が参加しました。今回のCESでは、Helm.ai社やImagination Technologies社など、弊社がアジア市場進出をサポートするテック企業が出展した他、インディアナ州経済開発局をはじめとする政府組織、さらには複数の大手日本企業のクライアントからも現地での視察・交流サポートをご依頼いただき、様々なステークホルダーを支援する機会となりました。私自身は日系企業クライアントのアテンドがメインとなりましたが、合間には、目玉となっている企業のブースを訪問したり、キーノートセッションを視聴することができました。
とにかく大きい
初めて参加したCESの第一印象としては、何よりも想像を絶するその大きさでした。ラスベガス市内の3ヶ所で開催されるCESですが、地図で見るとそこまで大きく見えないものの、実際に会場を歩き回ると驚くほどの広さで、1ヶ所の展示場をカバーするには丸一日使っても足りないほどでした。さらに、3つのメイン会場の他にもホテルのスイートルームで展示・面談スペースを持つ企業も数多くいる上、非公式のサイドイベントなどもあり、CES全てをカバーするには相当の時間がかかると実感しました。ベテラン参加者はよく「歩きやすい靴を持ってこい」とアドバイスしますが、その言葉の通り、最大一日で1万6千歩の歩数を記録しました!
多様な展示と豊富なプログラム
メディアなどで最も多く取り上げられるのは、大手企業の出展ブースや、最新発表を盛り込んだキーノートスピーチですが、その他にもCESでは様々な体験が可能です。例えば、主要会場の一つ、ベネチアンEXPOの地下で設けられている「Eureka Park」では、様々な国や団体がパビリオンを設置し、成長真っ只中のスタートアップ企業をアピールしており、イノベーションの種を見ることができます。その他にも会場内では、あらゆるミニイベントやトークセッション、製品デモなどが開催され、ありとあらゆるテーマや技術について学びを深めることができます。また、会場の外でも様々なネットワーキングイベントがホストされており、今回はラスベガスカントリークラブでモビリティをテーマにした、日本企業 x 海外スタートアップの交流イベントにも参加することができました。
とにかく、現地で見るのが面白い
濃厚なプログラム内容となっているCESですが、やはり一番印象に残るのは、実際に目で見て手で触れることができる最新技術です。これまで毎年のようにCESで発表される技術や製品を記事やテレビで見てきましたが、実際に会場で体験することで感じ取る感覚や、会話を交えながら得られる情報の深さは、やはり別格です。今年で目立った製品の一つは、LGが出展したワイヤレス透明ディスプレイでしたが、これはどうしても実際に現地で見てみないとその迫力は掴めないと思います!他にも、サムスンが展開するゲーム設備やスマートホーム家電、ソニーが展示した映画のバーチャルプロダクションスタジオ、ホンダ自動車とソニーが共同で開発したスマートカー「AFEELA」、その他最新のVRソリューションなど、現地でしかフルに体験できない数多くのプロダクトに出会うことができました。
家電だけではない
冒頭でも述べた通り、もともとCESは家電中心の展示会としてスタートしましたが、今ではコンシューマー向けの電気製品に限らず、ありとあらゆる最新イノベーションがショーケースされるイベントとなっています。それを象徴するかのように、イベント最初のキーノートでは、シーメンスがいきなり「Industrial Metaverse」をキーワードとして掲げ、ソニーと共同で開発したインダストリアル用途のVRソリューションなどをお披露目していた他、デジタルヘルスや、フードテック、自動運転技術を含むオートモーティブテックなど、あらゆるカテゴリの技術が展示されていました。
AIはまだこれから?
今回のCESではAIとモビリティが2つのメインテーマとして掲げられていましたが、特に生成AIが注目される中、実際のCESにおけるAIの存在感に関しては、まだこれからと言えるかも知れません。もちろん、一部には、L’OrealがAI美容アドバイザー「Beauty Genius」を発表した他、ChatGPT機能を盛り込んだ家電やモビリティソリューションも色々と見受けられましたが、事前に期待していたほどの破壊的な製品や目玉があったかというと、スタートしたばかりというのが実際の印象でした。
韓国勢が凄い
今回の視察の中でもう一つ印象深かった点としては、韓国企業が驚くほどの存在感を示していました。LG、サムスン、SKなどの大手企業もそうですが、今回はEureka Parkを中心に、何と500以上の韓国スタートアップが出展しており、その圧倒的な力と勢いを感じました。逆に、中国の存在感はほぼ全く感じられず、世界情勢の変化を表していました。
日本も負けてはいない
一方、グローバルでの競争力が近年問われつつある日本企業ですが、展示場を回る中、まだまだ日本ブランドの存在感や技術の力が発揮されていると肌で感じることができました。スタートアップについては、まだまだこれから発展して行くと予想されます。Eureka Parkでは、J-Startupのパビリオンが活気を見せていた一方で、弊社が知る数多くの有望な日本発スタートアップが今回不参加だったことを考えると、まだまだこれから発揮できるポテンシャルが秘められていると感じます。とはいえ、アフターコロナの韓国や欧米のあらゆるイノベーターの勢いを考えると、危機感を持ちながら世界で戦う競争力を培う必要があると思います。
準備が大事
今回、CESで日本企業様をサポートさせていただく中で強く感じたのは、イベント前の準備の重要性です。キーノートを視聴したり、トップ企業のブースを見て回るだけでももちろん有益ですが、4000社以上の企業が出展する中、効果的に深みのある視察や面談を行うことを希望する場合、現地に到着してからでは時遅しです。今回、弊社では大手企業の依頼を受け、事前に出展企業をスクリーニングし、ターゲット企業とのアポ取りを実施しました。やはり事前にアポを取った企業との面談が最も具体性のある会話を生み出し、次のステップに繋がる結果となりました。フリーに展示会を回る時間も大切ですが、海外のインベーターとの商談を推進したい企業様は、このようなベストプラクティスを活用することが望ましいと思います。
関係こそ価値
多くの場合、新しいイノベーションは繋がりを通して生まれます。CESで見られる多くの最新技術や進歩も、裏にはあらゆるステークホルダーの協力・共創のストーリーが存在しています。またCESでは、たくさんの完成された製品や技術を見て楽しむことができますが、実際にイノベーションを生み出すことを望む企業にとっては、CESのようなハブでこそ得られる海外テック企業やイノベーターとの出会いや交流が、将来的に何よりもアセットとなると思います。そして、このような出会いと継続的な関係構築を大事にすることが、日本の競争力に貢献する「共創力」になって行くのではないでしょうか。
来年に向けて…
今、戦争やインフレなど、世界であらゆる問題が意識される中、今年のCESはテクノロジー市場の活気と前進を感じさせる、大きなブライトスポットとなりました。今回、イベント主催者とも話をさせていただく機会がありましたが、2025年のCESでは、クロスインダストリーのシナジーに更に力を入れたいと考えている他、日本企業の更なる貢献にも期待しているとも語っていました。
イントラリンクでは30年以上にわたり、様々な市場や企業、ステークホルダーなどを繋げることで価値創造に貢献してきましたが、今後もCESなどの中心イベントを通じて、日本企業のグローバルな発展を支援していきたいと考えています。来年のCES開催に向けて、弊社でお力になれることなどがあれば、どうぞお気軽にご相談ください。