先日、弊社ロンドン拠点で事業開発マネージャーを務める村田愛が、欧州最大のテックイベントであるLondon Tech WeekとVivaTechに参加してきました。先週に公開したLondon Tech Weekを総括したブログに続き、今回はVivaTechに重点を置きながら、今年の両イベント概要や特徴、また今後欧州でのイベントを最大限に活用するための秘訣をまとめています。特に、今回両イベントへの参加が叶わなかった、また今後欧州でのイベント参加をご検討されている日本企業の皆様にお役立ていただければ幸いです。
はじめに
夏のバカンスを前に、6月の欧州は走り切れと言わんばかりにたくさんの展示会やテックイベントが開催されています。そんな中、イントラリンクが例年必ずチェックしているのが、英国のLondon Tech WeekとフランスのVivaTech。同じ週に開催される両イベントですが、焦点や規模には違いがあります。今年、私は幸運にも、両方のイベントに参加することができました。この機会に、今回の経験を通じて感じた印象や気づきをご報告します。
London Tech Week
London Tech Week(LTW)は、ロンドンで一週間にわたり開催されるグローバルなテックの祭典で、ロンドンが世界的なテックハブとして革新を続けていることを示すとともに、政府や企業のリーダー、スタートアップ、投資家などが一堂に会し、コラボレーションや知識共有を促進することに主眼が置かれています。 開始から10周年を迎える2023年度のテーマは、「Growing a Thriving & Resilient UK Tech Ecosystem, Inspiring a Sustainable Future, True digital transformation & Next Tech Frontiers」。3万人を超える参加者が集まり、特にフィンテックやヘルスなど英国が強みをもつ分野、またクリーンテックやAI、サイバーセキュリティなど英国が注力する分野を中心に、300以上の基調講演やカンファレンス、スタートアップの展示、ワークショップ、ネットワーキングセッションなどが行われました。 また、メイン会場外でも、使節団向けのクローズドイベント含め、数多くのサイドイベントが開催され、今年はAPAC地域からも600を超える代表団が参加、日本からも例年より多くの代表団が参加したそうです。 イントラリンクは英国政府から任命を受け、今年から、英国テック企業のAPAC進出を支援する「UK-APAC Tech Growth Programme」を運営させていただくこととなりました。この一環として、London Tech Weekでも、Aioi R&D Lab向けのピッチイベントはじめ、各種イベントをサポートさせていただきました。London Tech Weekについては、COOのジェレミー・ショーが詳しくまとめていますので、是非ご一読ください。
VivaTech
一方、2016年にスタートしたパリのViva Technology(VivaTech)は、欧州最大のテックスタートアップ見本市で、大企業とスタートアップ企業のコラボレーション創出の場として年々注目が高まっています。今年は174ヶ国から過去最高となる15万人の参加者と投資家、2,800社の出展企業が集まり、イーロン・マスク氏とマーク・ベニオフ氏がヘッドライナーを務めました。 今年のキーテーマには、Energy and climate tech、Inclusion and Diversity、FemTech、Future of Sportなどが挙げられましたが、中でも特に注目されたのはAIでしょう。奇しくも、VivaTechが開幕したのは、欧州連合が域内でのAI利用を規制・監視する世界初の法規制の草案を可決したその日。AIを巡る議論が活発化する中、マクロン仏大統領は、会場でフランスにおけるAIの開発への新たな投資を発表しました。 その他のハイライトとして、Country of the yearとして選出された韓国が、同国をリードする大企業やスタートアップをメインホールのパビリオンに集結させ、イノベーションにおいてますます強まる韓国の勢いを示していたことや、フランスではラグビーワールドカップとオリンピックを控えている背景からSports Techにも力を入れており、ウェルビーイングやe-スポーツなどのテーマのもと企業の展示や活発な議論が行われたことなどが挙げられます。
際立つ存在感を持ったグローバル企業と欧州スタートアップ
会場を歩き回る中で、欧州をリードする大企業の数々のイノベーティブな取り組みに触れることができました。特に印象に残った内容としては、下記のようなものがありました:
- VivaTech設立パートナーとして圧倒的な存在感を示し、百貨店のような華やかな設営のもとメゾンの生物多様性への取り組みやオムニチャネル戦略を紹介したLVMH
- セッションのほぼ全てをサステナビリティ関連で統一し、学術機関や外部組織と連携したサーキュラーエコノミーの取り組みについて発表したAUDI
- 拡張現実や人工知能を活用した、パーソナライズド美容ソリューションを紹介したL’Oreal
- Mobility & Smart City Parkをスポンサーし、イノベーティブな次世代の輸送機器と技術を集結させたTogg
スタートアップについては、先に述べたキーテーマ以外にもディープテックやフードテック、アドテックなど多様なセクターから企業が出展しており、比較的大きなブースを持つ企業から、勉強机の1/3ほどのブースを持つ企業までが所狭しと並び、会場全体が活気で溢れていました。VivaTechでは、毎年4つのアワードで有望なスタートアップを表彰しますが、今年のアワード及び受賞者は下記の通りでした:
日本企業が語るVivaTechの魅力と参加価値
VivaTechでは、多くの場合、大企業や公的機関がパビリオンを設置し、スタートアップをホストする形で設営されていましたが、そこから読み取れる大企業―スタートアップの関係性やエコシステムも、参加者の注目するポイントの一つだったようです。なお、日本企業の方々からは、CESなど他の大規模イベントと比較すると、VivaTechは会場のサイズ的にも回りやすく、カンファレンスやスタートアップ、大企業それぞれから得られる情報のバランスが良いという声がありました。
今回VivaTechの会場で、イノベーションや新規事業開発、またそれらに付随する市場調査に従事されている沢山の日本企業の方々にお会いさせていただきました。VivaTechへの参加のモチベーションは、カンファレンスから最新情報を得ることや、お目当てのスタートアップに会うこと、ブラウジングしながらアイディアを得ること、あるいは欧州のリーディングカンパニーの活動やエコシステムを学ぶことなど人によって様々でしたが、どの企業の方も、VivaTechを欧州での「Must visitイベント」として位置付けているようでした。VivaTechには毎年世界中からテック企業が集結し、その規模は年々拡大しています。海外企業への投資や協業をご検討中の方は、是非来年、参加されてみてはいかがでしょうか。 今後参加を検討される皆様に、おすすめしたいことをいくつか共有します。
- 参加イベントと近い日程で開催されるイベントもマークしておく
- VivaTechは週の後半に開催されることもあってか、今年はLondon Tech Weekや他のイベントに前半参加して、VivaTechに移動して来られる方が多かったようです。この時期はたくさんのイベントが立て続けで開催されるため、せっかくならばご専門分野のイベントが他にあるか合わせて確認するとよいかもしれません。
- サイドイベントやクローズドイベントがあるか調べておく
- 各イベントでは、公式サイトのプログラムに記載されていないサイドイベントがある可能性があります。開催国の大使館などが用意している特別プログラムやプライベートの集まりなどは、最大限の活用をおすすめします。
- 積極的にネットワーキングする
- 今回の訪問で、ネットワーキングから集まる情報に勝るものはないと感じさせられました。欧州の都市には第二言語としての英語話者が多く、非ネイティブスピーカーの英語を聞き慣れている人も多い傾向にあります。遠慮せずに話しかけてみると、思いがけない良いつながりができるかもしれません。
- 話したいスタートアップとは事前にアポイントを取っておく
- 大勢の投資家たちが集まる中、人気のスタートアップのキーパーソンと現地で話すのは大変難しいことだと感じました。興味のある会社をリストアップするだけでなく、可能な限り事前にアウトリーチをしておくことをお勧めします。
- イベントアプリを活用する
- オンライン出展のみのスタートアップへのアクセスや、参加者とのコネクション作り、出展企業の紹介ムービーや講演のライブ配信、録画配信の聴講など、アプリでできること・アクセスできる情報が沢山あります。せっかくチケットを購入するなら、最大限リソースを活用したいですよね!
貴重なお時間を共有いただいた皆様、本当にありがとうございました!
最後に、、、
London Tech Week、VivaTechともに、様々なセクターをカバーするテックイベントであるものの、この欧州2大イノベーションハブの共通の焦点となっていたのは、やはりサステナビリティとAIの分野でした。 近年、日本をはじめとするAPAC地域において、海外テック企業との共同開発プロジェクトやM&Aに対する大手企業の意欲は高まり続けています。特に上記の分野では、今後も沢山の日本企業―欧州スタートアップ企業間の協業事例が誕生するのではと期待しています。 イントラリンクは、欧米でイノベーション・新規事業開発を目指す皆様のパートナーとして、お客様の事業と親和性の高い最新スタートアップの発掘や、展示会訪問随行・代行も含めたハンズオンの市場調査サポートを提供しております。 欧州のイノベーションエコシステムにご関心をお持ちの方は、是非イントラリンクにご相談ください。現地での豊富な経験とネットワークを持った担当者が、サポートさせていただきます。