『蘭SuperLight Photonics、浜松ホトニクスCVCから資金確保』、『CO2から建材を生産するPaebbl、 2,500万ドルを調達』、『仏EDF、放射性廃棄物のリサイクルに向け始動』、『長寿バイオテックArda、4,300万ドルを調達』、『データ規制コンプライアンスのRelyance、3,200万ドル調達』、『AI会計ソフトNumeric、2,800万ドルを調達』、『マレーシア政府、エコシステムの強化に向けたイニシアチブ開始』、『フィリピン発フィンテックのOneLot、プレシード資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第105回」をお届けします。
2022年に蘭トゥエンテ大学からのスピンオフとして設立され、スーパーコンティニューム光源の専門知識を生かしてフォトニックIC(PIC)ソリューションを開発するSuperLight Photonicsが、浜松ホトニクスのCVCから戦略的投資を受けたと発表した。同社は、分光学、OCT、顕微鏡、トモグラフィ、計測学などのアプリケーションをターゲットとしており、バイオ医療、産業、科学、食品、農業などの市場にサービスを提供している。既に日本市場との強い関係を築いてきたSuperLight Photonicsは、今年9月にも日本の代理店KLVとの戦略的パートナーシップを発表している。そして今回の新たな出資により、今後チームの拡大、生産能力の増強、製品ポートフォリオのさらなる開発に加え、新市場への進出、世界的なディストリビューターやOEM、主要業界関係者とのより強固なパートナーシップの確立に向けて注力するという。
北欧・オランダを拠点にクライメートテックを専門とするPaebblは、回収したCO2を建築資材に変換する技術で、2,500万ドルのシリーズA資金を調達したと発表した。参加投資家には、AmazonのThe Climate Pledge Fund、世界的な建設・資材会社であるHolcim、独コンクリート・建設会社のAurum Impactなどが含まれる。回収したCO2をコンクリートなどの建築資材に貯蔵する独自の鉱物化技術を開発するPaebblは、2021年の設立から1年半でグラムスケールのラボテストから完全に機能するパイロットユニットへと移行し、毎日250kgのCO2貯蔵製品を生産している。今回のシリーズA資金調達により2025年前半の実証プラント稼働を目指す同社は、同施設において生産能力を3トン/日まで引き上げ、最大1トンのCO2を隔離する計画だ。さらにヘルシンキ、ロッテルダム、ストックホルムにある既存ハブを拡張するほか、英国にも新たなハブを開設するという。
フランス最大の電力会社であるEDFが、2020年に閉鎖したフェッセンハイム原子力発電所の跡地活用につき、放射性物質のリサイクルプラントの建設を計画している。同プラントはまだ認可手続き中であるものの、ひとたび稼動が開始されれば、40年間で50万トンの放射性金属を処理することができる。特筆すべきは、通常「非常に低レベルの放射性金属」だけが鋳鉄や鋼鉄に変換され、その他材料は核廃棄物処理施設に送られる点だ。このフランス初となるEDFの計画は、スウェーデン、ドイツ、アメリカなどで既に採用され、金属を再利用するためにインゴットに溶かす前に放射能を「除去」する技術を使用している。2022年までフランスの法律は、低放射性廃棄物の回収を禁じていた。しかし一定条件のもとで回収が可能となった現在も、一般市民はこのアプローチについて様々な意見を持っており、当局はこのプロジェクトを2025年2月までの期間限定的な一般投票に委ねている。
カリフォルニア発Arda Therapeuticsは、Andreessen Horowitz主導のシリーズAラウンドで4,300万ドルを調達した。従来の医薬品開発の標準的なパラダイムは、疾患に関連するタンパク質やシグナル伝達経路の変化に焦点を当ててきたため、特に複雑な慢性疾患になると、限定的な改善しかもたらさないと主張する同社は、特定の病原性細胞を排除することで問題の根源に対処し、より直接的でありながら画期的なソリューションの提供を目指す。線維症、自己免疫疾患、代謝性疾患にまず焦点を当て、腫瘍学から洞察を得ながら、非悪性慢性疾患の治療に変革をもたらしたいという考えだ。またArdaは、特定の過剰活性化細胞を除去することで、老化プロセスの主な要因となる一部を遅らせたり、あるいは逆転させることも可能となり、結果として高齢者の生活の質を改善できるだろうという仮説も打ち出している。
AIの需要と共に、ベンダーは新たなプライバシー規制への準拠、データ利用に関する顧客の懸念などにより、データセキュリティにますますフォーカスを当てている。そんな中、Relyance AIは最新のシリーズBラウンドで3,200万ドルを確保し、総額5,900万ドルを調達した。Relyanceによると、ほとんどの企業はAI導入にあたり、「データの可視性の欠如」、「データの取り扱いの複雑さ」、「急速な技術革新」という3つのハードルに直面しているという。これらはすべて、レピュテーションリスクにつながり、企業を法的脅威にさらす要因となる。Relyanceのプラットフォームはデータソースをスキャンし、「データインベントリ」と「データマップ」を作成してコンプライアンスを確保する。この技術で、同社はOneTrustなど競合他社の中でも順調に成長しており、収益は倍増、 CoinbaseやSnowflakeなどが名を連ねる顧客ベースも30%の伸びを見込んでいる。
サンフランシスコ発Numericは、1,000万ドルのシード資金調達からわずか5ヶ月後に実施されたMenlo Ventures 主導のシリーズAラウンドで2,800万ドルを調達した。同社は、AIを搭載したプラットフォームを開発し、財務データの整理と照合、月末のワークフローの自動化、財務変動に関するリアルタイムのレポート作成といった課題に取り組んでいる。Numericのソフトウェアは、さまざまな会計システムやスプレッドシートからデータを集約することで、毎月決算に要する時間の大幅削減を可能とする。また、このプラットフォームには、生成AI会計コパイロットが搭載されており、ユーザーは自然言語で質問を投げれば即座に回答を得ることができる。OpenAIやPlaidなどを顧客として抱えるNumericは、BlacklineやFloQastなどの企業と競合しながら、AI主導のアプローチで、会計士の役割をデータ作成者から戦略的アドバイザーへと再定義することを目指す。
マレーシアの政府系ファンドであるKhazanah Nasional Berhadは、国内エコシステムを強化するため、National Fund-of-Funds(NFOF)のもと、Emerging Fund Managers’ Program(EMP)およびRegional Fund Managers’ Initiative(RMI)を開始する。Khazanahによると、これらのイニシアチブは、今年7月に Malaysia Venture Capital Management(MAVCAP)および Penjana Kapital(PK)の買収に続くもの。EMPは、新興ファンドマネージャーの資金調達を支援することを目的としたもので、NFOFの資本コミットメントにより、地域競争力を持つ可能性のあるファンド・マネージャーへの投資を、投資家により強く確信させるねらいがある。これにより、ファンドマネージャーへの民間およびその他資本の流入が促進され、エコシステムの強化、結果としてマレーシアにおけるスタートアップの存在感が高まることが期待される。
フィリピンを拠点とする融資フィンテック企業のOneLotは、468 Capitalが主導するプレシードラウンドにおいて、400万ドルを調達した。OneLotによると、同ラウンドにはKaya Founders、Crestone Venture Capital、21yield、Founders Launchpad、さらには著名なエンジェル投資家が参加しているという。食料品を迅速に配達するアプリ「DART」を共同開発した経験を持つ創設者により設立された同社は現在、中古車ディーラー向けに運転資金融資を専門に提供している。その革新的なアプローチにより、ディーラーはデータ主導かつAIを活用した事業評価に基づき、事前承認済みの与信枠を利用して資金調達を行うことができるようになる。今年初めのローンチ以来、OneLotは中古車ディーラー向けに既に130万ドル以上の融資を提供し、200台以上の自動車に対する融資を実施してきた。そして、2024年第2および第3四半期の収益は10倍に増加したという。
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