『Volkswagen、スイスでSun2Wheelと双方向EV充電実現へ』、『ビッグテックに対抗、欧州企業2社が検索エンジン・インフラで提携』、『トルコ、航空テックでユニコーン大国へ前進』、『AIで汎用ロボットの可能性を広げるPhysical Intelligence、4億ドル調達』、『生成AIスタートアップWriter、2億ドルを調達』、『次世代血栓除去ソリューション開発のInquis、4,000万ドル調達』、『Intudo、インドネシアの新ファンドへ約1.2億ドル投資』、『中央アジア地域経済協力プログラム、クライメートテックファンドを創設』を取り上げた「イノベーションインサイト:第109回」をお届けします。
大手自動車メーカーのVolkswagenが、スイスで双方向EV充電を実現するため、EV充電スタートアップのSun2Wheelと提携したと発表した。2020年設立のSun2Wheelは、提供する双方向のEV充電インフラ(ソフトウェアとハードウェア)により、車両がバッテリーを使用して建物に(Vehicle-2-Home:V2H)、またグリッドに(Vehicle-2-Grid:V2G)電力を供給しており、既に三菱自動車やホンダとも提携している。Volkswagenは、ソフトウェアのアップデートにより、少なくとも77 kWhのバッテリーを搭載したID3、ID4、ID5、ID7、ID BuzzをはじめとするEVを双方向で充電できるようになる。Sun2Wheelの新たな22kWのウォールボックス型EV充電器と組み合わされる同充電システムは、来年半ばから納入される予定で、Sun2Wheelはすでに予約注文の受付を開始している。なお、同システムの価格は約13,800ユーロだが、スイスの各自治体から補助金が出る見込みだという。
ビッグテックへの依存を軽減し、Googleに匹敵する欧州独自の検索インデックスを構築するため、検索エンジンの開発に取り組む欧州テック企業2社が提携を発表した。ベルリンを拠点に持続可能性を重視するEcosiaと、パリにてプライバシー保護を専門とするQwantは、所有権を両社で折半する形で、European Search Perspectiveと呼ばれる合弁会社を設立する。フランス語とドイツ語の検索結果を改善することを目指す同合弁会社は、2025年初頭にフランスでサービスを開始する予定だ。現在、Ecosia、Qwant、DuckDuckGoのような代替検索エンジンは、独自のバックエンドインフラを開発しておらず、検索インフラにおいては90%のシェアを占めるGoogleの独占状態となっている。一方で、この新しいイニシアチブは、新しい検索モデルのトレーニングに有用なデータを共有するなど、ビッグテックに自社のプラットフォームへの公平かつ合理的なアクセスを提供することを求める新しいEUデジタル市場法によって、部分的に実現されたものとなる。QwantとEcosiaは、自社開発の検索インデックスを自社の検索エンジンに使用する予定だが、同技術は他企業にも提供される予定だという。
欧州と西アジアを結ぶトルコは、活気あるスタートアップ・エコシステムとして成長を続けている。同国には現在、超スピード食料品配達のGetirを含む6社のユニコーンが存在するが、トルコ政府は2030年までに100社のユニコーンを生み出すという野心的な目標を掲げている。その目標を達成するために鍵を握るセクターのひとつが、航空業界だ。その中で最も有望なスタートアップを特定するため、トルコの空港運営・サービス会社TAV Airportsは、空港運営のデジタル化や脱炭素化の実現など、さまざまな問題に対するソリューションを提供するスタートアップを集めたAirport Innovation Dayをアンカラにて開催した。同イベントで行われたピッチコンテストでは、大きな問題になりうる機械メンテナンスにおいて、メンテナンス・コストを25%、CO2排出量を15%それぞれ削減すると主張するエンド・ツー・エンドの予知保全プラットフォームを提供するSensemoreが優勝した。続いて、障害を持つ旅行者支援のために視覚サポート・プラットフォームを開発するAssistboxが、また混合廃棄物のリサイクルを促進する廃棄物管理スタートアップのWaste Logが2位と3位をそれぞれ獲得した。
サンフランシスコ発Physical Intelligenceは、ジェフ・ベゾス、Thrive Capital、Lux Capitalが主導し、OpenAIなどの追加支援を受けた最新ラウンドで4億ドルを調達した。元Googleのロボット科学者、カリフォルニア大学バークレー校教授、投資家からなる創業チームが共同設立し、ロボットに特化した汎用「AI脳」の開発に取り組む同社は、従来のタスク特化型システムモデルから脱却し、あらゆるロボットを制御できる汎用ソフトウェアの開発を目指している。汎用ロボットともなると膨大な量の現実世界のデータが必要となるが、Physical Intelligenceは必要なデータを独自で収集する。同社のソフトウェア「π0」は、すでに洗濯物をたたんだり、テーブルを片付けたり、コーヒー豆を挽くなどの能力を実証している。Skild、Figure AI、Covariantなど続々と競合がひしめく中、Physical Intelligenceの資金調達は、AmazonやTeslaも更なる関心を見せるロボット工学分野に大きな影響を与えるだろう。
企業向け生成AIプラットフォームを提供するWriterは、Premji Invest、Radical Ventures、ICONIQ Growthが共同主導し、Salesforce VenturesやAdobe Venturesなども参加したシリーズCラウンドで2億ドルを調達し、総資金調達額は3億2,600万ドル、企業価値も19億ドルに達した。2020年設立のWriterは、テキスト生成用のPalmyraファミリーモデルを含む、カスタマイズ可能なフルスタックAIプラットフォームを開発している。昨年には、ビジネスデータの統合とセルフホスティングを可能にする新機能が発表され、現在はワークフローの自動化とノーコード開発ツールのためのAIエージェントにフォーカスしている。特に厳しい競争環境ではあるが、エンタープライズAI市場で勢いを伸ばすWriterの顧客リストにはUber、Salesforce、L'Oréalなどが含まれる。引き続き多額のベンチャーキャピタルを惹きつける中、生成AI市場は今後10年間で1兆ドルを超えると予想されている。
Inquis Medicalは、Marshall Wace主導のシリーズBラウンドで4,000万ドルを調達し、血栓除去システムAventusの2025年の発売を目指す。Aventusは、低侵襲の血栓除去を可能にする医療機器として、昨年11月に米国市場参入メーカーに義務付けられている510(k)認可を取得した。デバイスの先端が血液、血栓、血管壁のどれに接触しているかに応じてライトが点灯する、独自のセンサー技術を搭載しているという点が特徴とされている。この組織感知チップは、統合ナビゲーションカテーテルおよび血液還流システムとともに、処置の効率性を改善し、出血量を減少させることが可能だという。Inquisが急性肺塞栓症患者120人を対象に行う臨床試験で、安全性と有効性が評価されることになる。今回の調達資金により同社はこのテストを完了し、Aventusの商業的立ち上げの準備に移行する予定だ。
インドネシアとシリコンバレーで事業を展開する投資会社Intudoは、「インドネシアに世界を、世界にインドネシアを」をモットーに、Intudo Ventures IVと、天然資源と再生可能エネルギーの下流部門に投資するファンドに、それぞれ7,500万ドルと5,000万ドル、合計1億2,500万ドルを出資した。前者のIntudo Ventures IVは、インドネシアが国際経済で存在感を高めつつあること、また進行中の工業化とデジタル化の潮流、中流階級の急成長といった好機を捉え、同国が国際的に強みを持つ分野に戦略的に注力しながら、地元企業への投資に専念している。また、後者のファンドは、インドネシアがグローバルバリューチェーンでの地位を高め、重要分野で市場シェアを拡大し、サプライチェーンの主要なリンクを国内に回帰させるという大きな流れに適合したものである。
中央アジア地域経済協力(CAREC)プログラムの参加国は、気候変動対応計画(CCAP)を承認し、気候変動への耐性強化、低炭素成長および持続可能な開発を目的とした地域協力の枠組みとして「CAREC気候・持続可能性プロジェクト準備基金(CSPPF)」を創設した。先日、カザフスタン・アスタナで開催された第23回CAREC閣僚会議において、同基金の設立が正式に承認された。さらに、閣僚らは「CAREC 2030戦略」の中間レビューも採択し、地域協力の活性化や気候変動への適応、地域公共財の促進に向けた取り組みの強化を推奨した。2025年から2027年を対象とするCCAPは、CAREC気候変動ビジョンの実現に向けた優先的な取り組みを定めている。この枠組みは、気候変動対応に向け、気候リスクへの備えと対応の改善、水・エネルギー・食糧の連携強化、低炭素成長の促進、そしてCARECの気候プラットフォームの構築を目指す4つの主要分野に焦点を当てている。アジア開発銀行(ADB)は、中華人民共和国財務省および大韓民国経済財務省との間で資金拠出協定を締結し、CSPPFの初期資金として総額500万ドルを調達した。
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