『英ICLと鉱業大手Rio Tinto、エネルギー転換に向け大型連携』、『AMPECO、グローバルEV充電管理プラットフォームで資金調達』、『日本ガイシ、ハンガリーの再エネ事業者向けにNAS電池を受注』、『クラウドセキュリティUpwindが1億ドル調達、企業価値も9億ドルに』、『国防に特化した生成AI のYurts、4,000万ドルを調達』、『AIエージェント開発「/dev/agents」、5,600万ドルを調達』、『シンガポールPi-xcels、ワンタップNFCデジタルレシートで資金調達』、『シンガポールのUnaBiz、プレシリーズCラウンドを完了』を取り上げた「イノベーションインサイト:第112回」をお届けします。
世界の大学ランキングでもトップ10に入る英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンと、英豪の金属・鉱業グループである Rio Tintoが今週、「Rio Tinto Centre for Future Materials」を立ち上げた。同施設は、材料の調達、加工、使用、リサイクル方法の革新に焦点を当て、Rio Tintoは、今後10年間で1億5,000万ドルを投資し、このイニシアティブを支援する予定。また両者はこの施設を通じて、ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)、カリフォルニア大学(米国)、ウィットウォーターズランド大学(南ア)、オーストラリア国立大学の4つのパートナー大学と連携する。様々なテーマの研究プログラムを共同で立ち上げ、資金を提供する同施設だが、最初の大規模プログラムは銅に焦点を当てている。これは地殻内の流体からの銅抽出、微生物を使用した岩石からの金属採取、古い鉱山から排出される廃棄物の最適化など、銅を抽出する新たな方法を研究するもので、「エネルギー転換に向けた未来の素材システムを誠実に実現: 銅の課題を克服」と題されている。
ブルガリアのEV充電管理プラットフォームのAMPECOが、BMW i Venturesを含む既存投資家からシリーズB資金として2,470万ユーロを調達した。2019年設立の同社は、充電ポイント事業者(CPO)やeモビリティ・サービス・プロバイダー(eMSP)がEV充電事業を効率的に拡張できるようにする、ハードウェアにとらわれないホワイトラベルのプラットフォームを提供している。このソリューションは、既に60ヶ国、160社以上のクライアントに採用され、12万ヶ所以上の充電ステーションで使用されている。具体的には、欧州のEON Drive Infrastructure、フランスのChargeGuruとZeplug、米国のFree2Move、北欧のWattifとElawayなどの業界各社とパートナーシップを確立している。世界では2030年までに必要とされる公共充電ポイントは推定4,000万ヶ所に達し、5,000億ドルの投資機会となると予想されている。AMPECOは今回の資金調達により、プラットフォームの機能強化に加え、西欧、北欧、北米、東南アジアなどの主要市場へのさらなる展開、そして今後2年間でチーム規模の倍増を視野に入れている。
日本ガイシは今週、2030年までに発電量の90%を低炭素電源に移行すると明言しているハンガリーで再エネ事業を展開するGreenergy Triotechnikから、電力貯蔵用NAS電池を受注したと発表した。大容量で長時間放電できるという特徴を持つこのNAS電池は、Greenergyの太陽光発電所内に設置され、発電ピーク時に充電することで、余剰電力の浪費を抑える。日本ガイシのNAS電池は世界250ヶ所以上に設置され、総容量は約5,000メガワット時に達している。なお、 Greenergy は2025年6月までにコンテナ型NAS電池2台を設置する予定で、出力は直流500キロワット、容量は直流2,900キロワット時と想定される。
ニューヨーク発クラウドセキュリティのUpwindは、Craft Ventures主導のシリーズAラウンドで1億ドルを調達した。新規投資家のTCVやAlta Park Capitalに加え、既存投資家の Greylock、Cyberstarts、NBAプレーヤー、ステフィン・カリーのPenny Jar基金などが参加した。「ランタイム」セキュリティに特化した Upwind は、リアルタイムの脅威の優先順位付けに重点的に取り組み、企業がアラート過多を90%削減できるよう支援する。同社のプラットフォームは、クラウドセキュリティポスチャ管理、APIセキュリティ、コンテナセキュリティなどの分野をカバーしている。クラウドの採用が複雑性と脆弱性を引き起こす中、Upwindのソリューションは、組織システムの攻撃対象領域の拡大に対応している。企業からの需要の高まりとデータ侵害の増加という現状を受け、Upwindは、予測的なセキュリティ対策とコード分析のためにAIを統合し、プラットフォームの精度を高めていく計画だ。
国防、政府、企業顧客に特化した生成AIを開発するYurtsは、XYZ Venture Capitalが主導し、Glynn Capitalなどの追加支援を受けたシリーズBラウンドで4,000万ドルを調達した。この調達資金により、同社は業務の拡大、チームの拡充、そしてミッションクリティカルなシステムへの生成AIの統合をさらに進める予定だ。 Yurtsは、米国国防総省向けにシークレットレベルのネットワーク上で、初となるAIプラットフォームを提供し、職員に高度な意思決定ツールを提供している。 同社プラットフォームは、機密データを損なうことなくレガシーシステムにシームレスに統合され、オンプレミスで動作するなど、セキュアな環境向けに設計されている。現在、Yurts全従業員の25%が有効なセキュリティクリアランスを保有しており、米陸軍、空軍、エネルギー省など、高度なセキュリティが求められる分野にサービスを提供中だ。また、オラクルとのパートナーシップを活用し、記録システムの近代化を図るなど、企業へのソリューションも拡大中だ。
AIスタートアップ/dev/agentsは、Index VenturesとCapitalGが主導し、OpenAIの共同創設者Andrej Karpathy氏をはじめとする著名な投資家からの支援を受け、シード資金として5,600万ドルを調達した。 同社は、AIエージェント向けのクラウドベースのオペレーティングシステムを開発し、開発者が現在の大規模言語モデル(LLM)を超える信頼性の高い自律型ツールを作成できるようサポートする。共同創業者のビジョンは、Google、Meta、Stripeでの主導的役割から得た豊富な経験を生かし、断片化された開発プラットフォーム、時代遅れのUIパターン、プライバシーに関する懸念といった主な障壁に対処することで、AIの導入に革命をもたらす点にある。Androidがモバイル開発に変革をもたらしたように、/dev/agentsはAI統合の簡素化実現を目指す。このプラットフォームで開発されたAIエージェントは、自律的に動作し、デバッグコード、リソース管理、人間のような意思決定など、複雑なタスクを実行する。
インタラクティブな電子レシート技術を開発するシンガポールのPi-xcelsが、270万ドルの資金を調達した。 Headline が主導する2度目の資金調達ラウンドには、Wavemaker PartnersやHustle Fundなどの既存投資家に加え、Shizen CapitalやSeedstars International Venturesといった新規投資家も参加した。Pi-xcelsは、アプリ不要のNFC対応電子レシート技術を提供、ワンタップでデジタルレシートを受け取ることで顧客体験を向上させると同時に、小売業者が顧客行動をより深く理解できるよう支援する。これは、紙のレシートに代わる環境に優しい選択肢としても期待される。新たに調達した資金は、欧州、日本、東南アジアにおける事業基盤の強化と、米国市場への参入に活用される予定。さらに戦略的パートナーシップの拡大や、NFC技術のさらなる開発も推進する。これによりPi-xcelsは、急増する需要に応じたソリューションの拡充、技術の保護、そして小売業におけるデジタルレシートの新たな業界標準を確立することを目指している。
シンガポール発カスタマイズIoTソリューションプロバイダーのUnaBizが、プレシリーズCラウンドで戦略的投資を受けたことを発表した。今回の投資は、東南アジア最大のクリーンエネルギー企業であるSunseapグループ共同創設者のFrank Phuan氏によるもの。今回の資金調達は、今年8月にKDDIグローバルイノベーションファンド3と京セラコミュニケーションシステムが主導したプレシリーズCラウンドの第一弾を受けて実施された。2016年設立のUnaBizは、航空宇宙、施設管理、ヘルスケア、物流、スマートシティなど幅広い分野において、エネルギー効率が高く拡張性に優れたIoTソリューションを提供している。同社は、過去2年間で定期収益が10倍以上に増加し、0Gネットワークに500万台以上のデバイスを追加するなど、顕著な成長を遂げてきた。Phuan氏は今回の出資理由として、コア技術であるSigfoxの活用、特にエネルギーや公益事業分野でESGに大きなインパクトを与える数少ないディープテック企業の一つであるという点を評価している。また、同社の技術は持続可能な価値創出と顧客のネットゼロ移行を加速させるという。UnaBizはこの1年間で100万台のセキュリティデバイスを接続しているが、現在はテレメトリーおよび妨害電波対策サービスのグローバル展開に注力し、大手自動車およびオートバイメーカーとの提携に投資している。
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