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イノベーションインサイト:第116回

イノベーションインサイト:第116回

『英国、新たなAIインフラ計画を発表』、『双日、ターコイズ水素のHycamite TCDの筆頭株主に』、『スイス、キノコ電池で電力供給』、『Truveta、大規模ゲノムプロジェクト推進に3.2億ドルを調達』、『Hippocratic AI、AIエージェントのアプリストア展開でユニコーンへ』、『サプライチェーン盗難対策に取り組むOverhaul、5,500万ドル調達』、『August Global Partners、ベトナムのGene Solutionsに出資』、『シンガポール発ワイヤレス充電ソリューションのXnergyが資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第116回」をお届けします。

英国、新たなAIインフラ計画を発表

英国政府は今週、事業の立ち上げ、拡大、成長を目指すAI企業が英国をターゲット市場に選択することを目的に、50の施策が盛り込まれたAI Opportunities Action Plan」を発表した。これには、計画プロセスを効率化し、データセンターの送電網へのアクセス強化に向けて設計された専用の「AI Growth Zone」の創設が含まれており、最初のゾーンはオックスフォード州に設置予定だというまた追加措置として、公共データへのアクセスを通じてAI開発を促進するための国家データライブラリーや、AIソリューションを導入するための政府省庁内の専門チームなども設置される。英国によるAIの推進は、民間部門にて多額の投資を集めている。例えば、ロンドンを拠点にデータセンターを運営するNscaleは、今後3年間で同国のデータセンター・インフラを強化するために23億ユーロを拠出すると同様に、米国発Vantage Data Centresも、英国全土のデータセンター開発に約140億ユーロの投資を約束している。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

双日、ターコイズ水素のHycamite TCDの筆頭株主に

双日は、フィンランドを拠点にターコイズ水素を開発するHycamite TCD Technologiesに、OMV PetromMitsui O.S.K. Linesなどが参加したシリーズAラウンドにて4,400万ユーロを出資した2023年にHycamiteへ出資参画している双日は、今回の追加投資により同社の筆頭株主となった。メタンを熱触媒で分解し、水素と付加価値の高い固体炭素(グラファイト、カーボンナノファイバーなど)を生成するターコイズ水素は、CO2を排出しない、新しいタイプの水素製造法として注目されている。双日は、2020年代後半までにHycamiteのターコイズ水素を商業化することを目標に、同社技術を用いた国内外におけるプロジェクトの実施加速に加え、年間2,000トンの水素を生産可能な工業規模のプラント建設を支援する。なお、同プラントの操業開始は2025年を予定している。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

スイス、キノコ電池で電力供給

スイス連邦材料科学技術研究所EMPA)の研究者たちが、完全に無毒で生分解性の真菌電池を開発した。この技術は、真菌の細胞をセルロースベースのインクに混ぜて3Dプリントし、「微生物燃料電池」を作ることで、菌類の栄養素をエネルギーに変換し、そのエネルギーの一部を電気として取り込むもの。電池の陽極には、代謝によって電子を放出する真菌が存在する一方、陰極では別の菌が特殊な酵素を生成し、電子を捕まえて細胞外に伝導させる。この真菌電池は、乾燥した状態で保存するだけでなく、水と栄養分を加えて活性化させることもできる上、役目を終えると、内部から消化される。現時点ではまだ大量の電力を供給することはできないが、例えば、農業用の温度センサーに数日間電力を供給するために使用できるという。研究者らは今後、この真菌電池をより強力で長持ちさせるために開発を続けていく予定。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Truveta、大規模ゲノムプロジェクト推進に3.2億ドルを調達

シアトルを拠点とする医療データ企業のTruveta32,000万ドルを調達し、その企業価値も10億ドルを超えた。Illumina、Regeneronなどからの出資でかつてない規模のゲノムプロジェクトを推進する同社は、30の提携機関の医療記録と遺伝子データを結びつけ、遺伝子型および表現型の情報を含む世界最大かつ最も多様なデータベースの構築を目指している。Truvetaのプラットフォームは既に日々更新される12,000万件の匿名化された患者記録を収集している2023年以降、医療関連テキストを解析し、医師のメモや保険請求などのソースから患者の診断、投薬、検査結果、その他のデータを抽出する独自のAIモデルを開発中しているTruveta Genome Projectは、匿名化された遺伝子研究のために、日常的なラボテストなどから余った生物試料を収集する計画で、最初の1,000万人の参加者のエクソーム配列を遺伝学センターが解読する流れとなる。このデータベースは今後、精密医療の進歩、早期の疾患発見と予防、医療費の削減、慢性疾患管理の改善を実現すると期待されている 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Hippocratic AI、AIエージェントのアプリストア展開でユニコーンへ

ヘルスケアに特化したAIスタートアップHippocratic AIは、Kleiner Perkinsが主導し、General Catalyst、Nvidiaなどが参加したシリーズBラウンド14,100万ドルを調達、ユニコーンステータスを獲得した。2023年設立の同社は、生成AI技術を活用し、世界的なヘルスケア人材不足の解消を目指すHippocratic独自の「人材」マーケットプレースでは、医療システムや被保険者が、慢性疾患管理や心不全腎臓病などの疾患の退院後の経過観察など、リスクが低く診断を必要としない業務をAIエージェントに「依頼」することができる。臨床医を支援するために、同社はAIエージェントのアプリストアを立ち上げ、患者ケアや業務上の課題に対応するカスタマイズされたAIエージェントを設計できるようにした。20235月にステルスモードを脱却して以来、HippocraticPolaris 2.0アーキテクチャをリリースし、米国で最初の特許を取得するなど、革新的なアプローチと着実な成長により、ヘルスケアAIの分野における主要プレーヤーとしての地位を確立したと言えるだろう。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サプライチェーン盗難対策に取り組むOverhaul、5,500万ドル調達

テキサス発、サプライチェーンの可視性とセキュリティプラットフォームを提供するOverhaulは、Springcoast Partnersが主導する資金ラウンドで5,500万ドルを調達した。盗難、コンプライアンス、効率性など、ロジスティクスにおける課題に取り組む同社は、遠隔測定技術とAIを活用して商品の追跡、品質の確保、コスト削減の機会の特定を行うOverhaulプラットフォームをMicrosoft、Dyson、Bristol Myers Squibbなど350社以上の顧客にサービスを提供しており、貨物盗難や遅延などをリアルタイムで警告するなど、リスク管理における重要な役割を果たしている2024年第3四半期は、北米全体で貨物盗難が前年比14%増となり、依然として大きな懸念事項となっているのが現状で、今四半期には、盗難品の価値が3,900万ドルを超えたとも言われているOverhaulAI駆動型プラットフォームは、グローバルセキュリティ業務と統合され、法執行機関にも連携を取ることで今後盗難防止と回復を支援するソリューションとしての開発が進められる。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

August Global Partners、ベトナムのGene Solutionsに出資 

シンガポールに本社を置くヘルスケア投資会社August Global PartnersAGPは、独自の資金調達ラウンドを通じて、ベトナムのゲノム検査会社Gene Solutionsに投資を行った。覚書によれば、GeneAIを活用し、科学的知識ベース、大規模言語モデル、マルチオミックスより得たインサイトや臨床データベースを統合したAIスイート「DNAsphere.AI」を開発している。このAIスイートは、生殖医療および腫瘍学分野における長年の臨床研究パートナーシップとDNA検査の専門知識を基盤としており、次世代シーケンシング(NGS)サービスの限界を押し広げる役割を果たしている。DNAsphere.AIの導入により、Geneはシーケンスコストの削減と検査性能の向上を実現し、個別化医療ソリューションへのアクセスを拡大している。一方、August Global Partnersは世界トップクラスの研究リソースや地域パートナーへのアクセスをGeneに提供することで、同社の腫瘍学ソリューションの性能向上を支援している。この協力関係によりGeneは検査精度のさらなる向上を進めるとともに、DNAsphere.AIを個別化がん治療アプリケーションに導入することが可能となる。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シンガポール発ワイヤレス充電ソリューションのXnergyが資金調達 

シンガポールのXnergy Autonomous Power TechnologiesXnergyは、韓国VCWoori Venture Partnersから多額の出資を受けたことを発表した。この投資は、新エネルギー自動車を含む新たな分野や地域への進出を目指すXnergyの成長戦略に沿ったものである。 2018年に設立されたXnergyは、新興市場を重点に、あらゆる自律型電動モビリティ向けのハイパワーワイヤレス充電ソリューションを提供する大手企業。同社の製品は欧州、米国、アジアの約40ヶ国で既に展開されており、モバイルロボット企業、システムインテグレーター、エンドユーザーなど、多岐にわたる顧客基盤を持つ。Xnergyの製品ポートフォリオには、モバイルロボットおよび電気自動車向けのソリューションが含まれモバイルロボット向けには39kWのワイヤレス非接触充電システムを提供し、オンデマンドのトリクル充電に対応している。電気自動車向けには、22kW、800Vの双方向充電および放電ソリューションを開発し、高速かつ効率的なエネルギー管理を実現する。同社の独自技術は、コンパクトな設計、汎用性および高い電力密度を特徴としており、モジュール設計を採用することで拡張性とカスタマイズ性を向上させ、多様な顧客ニーズにも対応することで、コスト効率の高いソリューションを提供しつつ、さらなる市場拡大を目指している。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イントラリンクについて

イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。

植木 このみ
About the Author

植木 このみ

オックスフォード本社を拠点に、プロジェクト実行チームの一員として、日本ならびにアジア大手企業を対象としたマーケティング事業をリードしている。2020年より海外エコシステムの最新情報を日本語で提供する「イノベーション・インサイト」を執筆。また欧州におけるイベント企画・運営も担当。

ラフバラー大学にて国際経営学修士号を取得後、ロンドンの日系企業でEMEA在日本企業の経営ビジネス戦略構築をサポートした経験を持つ。

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