『独NEURA Robotics、高度な協働ロボットで1.2億ドル調達』、『生成AIのSynthesia、同分野で英国最高企業価値を記録』、『蘭エコシステム、欧州6位のVC資金調達』、『企業向けスマート・ダッシュカム開発のNetradyne、9,000万ドルを調達』、『中型EVメーカーのHarbinger、1億ドルを調達』、『Amogy、大型輸送用アンモニアの商業化に向けて資金調達』、『ウェルステックのEndowus、1,750万ドル調達』、『インドネシアのBythen、シードラウンドで500万ドル調達』、『Skor Technologies、プレシリーズAラウンドで620万ドルを調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第117回」をお届けします。
ドイツ発ロボット工学スタートアップのNEURA Roboticsが、シリーズB資金として1億2,000万ユーロを確保した。2019年に設立されたNEURAは、見る、聞く、触覚を認識することができる高度な感覚機能を備えた協働ロボットを開発している。同社は、認知ロボットアームのMAiRA、台車状で重い荷物を運搬できる移動ロボットMAV、そしてまだ市場に出回っていない人間型ロボットの最新版MiPAなど、5つのロボットモデルを有し、これらは製造、物流、ヘルスケアなどの産業で応用されている。投資プラットフォームの Altindexによると、ロボット産業は米国や中国よりも欧州での成長が顕著であり、その市場規模が2029年までに288億ドルに達すると予想される中、NEURAは過去1年間で従業員が300人以上に倍増し、収益も10倍に増加、受注残高も10億ユーロにのぼるという。
ロンドンを拠点とする生成AIのSynthesiaは、最新のシリーズDラウンドで1億8,000万ドルを調達した。NVIDIAやGoogleのVC部門からの出資もあり、2023年にユニコーンの地位を既に獲得している同社だが、今回の大型資金調達により、英国で最も価値のある生成AI企業となり、その価値は21億ドルに達した。2017年設立のSynthesiaは、主に企業コミュニケーションやトレーニングのために人間のようなデジタルアバターを生成する。企業顧客はスクリプトを入力し、好みのデジタル・スピーカーを選択することで、説得力のある内容を伝えることができる。また、カメラに向かって話す人物の映像を使って、自分自身のアバターを作成することもできる。これは、実在人物の違法な模倣を防ぐため、厳格な同意要件の下で行われる。中小企業からFortune 100 の60%を含む大手ブランドまで、60,000社以上の顧客を持つSynthesiaは、今回の調達資金を製品開発、チーム拡充、そして日本、オーストラリア、欧州、北米を含む複数市場へのプラットフォームの拡大に充てる予定だ。
Dealroomが発表したオランダ・エコシステムに関する最新レポートによると、2024年の蘭スタートアップのVC資金調達額は、前年比13%増の27億ドルとなった。2024年に最も資金が集まったのは5億2,860万ドルのフードテックで、これにヘルス(5億480万ドル)、エネルギー(5億430万ドル)、フィンテック(4億5,810万ドル)、半導体(3億4160万ドル)が続いた。これらのセクターで活躍する企業には、フードテックのMeatable(11月に3,000万ユーロ調達)、グリーンケミストリーのBioBTX(6月に8,000万ユーロ超調達)、バイオテックのCitryll(12月に8,500万ユーロ調達)、半導体のNearfield Instruments(7月に1億3,500万ユーロ調達)などが挙げられる。国別で見ると、オランダはVC投資額で、英国(162億ドル)、ドイツ(82億ドル)、フランス(78億ドル)、スイス(31億ドル)、スウェーデン(27億ドル)に次いで、欧州で6位にランクされている一方、首都アムステルダムも、ロンドン、パリ、ミュンヘン、ベルリン、ストックホルムなどのテック・ハブとともに、都市レベルでも6位にランクされている。
カリフォルニア発Netradyneは、アイルランドや日本を含む新たな市場への進出と技術向上を目指し、最新の資金調達ラウンドで9,000万ドルを確保 、評価額も13億5,000万ドルとなった。Netradyneは、AI対応のダッシュカムを活用して、注意散漫運転などに対処、車両運行の安全性を向上させる。NetradyneのSafety Manager Assistantは、AI搭載のコパイロットとして、企業ポータルに自然言語インターフェースを提供し、生成AIを使用したデータや洞察に関する会話を実行する。現在Amazonなどの大手企業に採用されており、リアルタイムのドライバーアラートと行動報酬により、事故を約50%削減しているという。また180億マイル以上のデータを収集し、生成AIを使用してエッジケースを分析することで、自律走行モデルの改善を図るNetradyneは、プライバシーコンプライアンスに細心を払ったドライバーモニタリング・ソリューションを通じて、ドライバーの眠気を検知するという機能も提供、過去1年間で65%の成長を達成し、間もなくの収益化を目指している。
中型EVメーカーのHarbingerは、CapricornのTechnology Impact Fundが主導し、Tiger Global、Coca-Cola System Sustainability Fund、ArcTern Venturesなどが参加したシリーズBラウンドで1億ドルを調達した。 同社はこの資金により、より大規模な生産能力を展開することで成長を大幅に加速し、全米展開に向けた販売、部品、サービス業務を拡大する予定だ。 また、Harbingerは、新製品ラインへの投資も計画しており、ドライバーの運転をアシストする先進的な運転支援システムADASや、最近発表したハイブリッドRVシャーシ、将来のキャブシャーシなどの新製品に関連する新技術の開発も継続する。Harbingerは、Sara Lee、Thomas、Entenmann’sなどのブランドを製造する大手ベーカリー企業Bimbo Bakeries USAや、Airstream、Jayco、Tiffin、Thor Motor Coachなどの企業グループを傘下に持つRVメーカーTHOR Industriesなどの大手顧客から、総額約5億ドル規模、4,690台の受注を受けており、生産規模の拡大に注力しつつ、電動化が成熟したセグメント向けの車両を開発していく計画だ。
ニューヨークを拠点とするAmogyは、船舶輸送など電化が難しい分野の脱炭素化を目的とした、アンモニアから電力への技術開発を進めるため、5,600万ドルを調達した。 MITの博士課程修了者らが設立したAmogyの技術は、アンモニアを窒素と水素に分解し、窒素を大気中に放出する一方で、水素を船舶や機械の動力源として使用する。Aramco Venturesや SV Investmentなどの投資家から支援を受ける同社は、2026年までの商品化を計画中だ。これまでにタグボート、ドローン、トラクター、セミトラックでその技術を実証しており、2020年の創業以来、2億7,000万ドル以上の資金を調達してきた。アンモニアはエネルギー密度が高く、バッテリーと比較して貯蔵の必要性が低いことから、世界の排出量の3%を占める船舶輸送に有望な低炭素代替手段である。しかし、その生産、輸送、潜在的な環境への悪影響という課題が残っているのも事実だ。国際海事機関は、2040年までに排出量を70%削減することを目標としており、アンモニアはネットゼロ目標の達成において重要な役割を果たすことが期待されている。
資産運用プラットフォームを提供するEndowusは先日、新規投資家としてOSK Ventures、The Wells Investment、さらにバスケットボール選手の Jeremy Lin氏が率いるインパクトファンドであるJLIN LLCが参加した最新ラウンドで、1,750万ドルの資金調達を完了した。本ラウンドには、既存投資家としてProsus、UBS、MUFG Innovation Partnersも引き続き参加しており、同社の調達資金総額は5,250万ドルに達した。Endowusは、キャッシュ・マネジメント、債券、株式、プライベート・エクイティ、プライベート・クレジット、ヘッジファンドなど、あらゆる主要資産クラスにおいて、80を超える世界有数の資産運用会社と提携、顧客の個人資産と公的年金資産を総合的にサポートするとともに、その運用資産総額は2024年11月時点で70億ドルを超えている。今回得た資金は、シンガポールおよび香港でのプラットフォーム拡大を目的とした人材確保やテクノロジーへの投資に充てられる一方、顧客体験および業務効率の向上を目指し、AIの活用も推進する計画だという。
インドネシアを拠点とするBythenは、バーチャルクリエイター向けのデジタルキャラクター制作プラットフォームを提供する。同社は、日本のVectorおよびSkystar Capitalが主導するシードラウンドで500万ドルを調達した。Bythenは、今回の資金調達を基にグローバル展開を加速させる計画で、特にWeb3やゲーム分野を含む多様な領域において、2025年までに15,000人のバーチャルインフルエンサーを獲得することを目指している。また、オリジナルIPコレクションのリリースや国際的なIPオーナーとのコラボレーションも進めるという。2024年設立の同社は、AIを活用したデジタルツイン「バイト」を通じて、ユーザーがクリエイティブなコンテンツ制作やライブ配信を行えるプラットフォームを提供している。同社の技術は、24時間365日のエンゲージメントを自動化し、誰もがバーチャルインフルエンサーとして活躍できる環境を実現するという。
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