『仏Alice & Bob、「世界初」の量子コンピュータで1億ユーロ調達』、『独INERATEC、欧州最大の合成燃料工場建設に向け7,000万ユーロ調達』、『英Xaarのインクジェット技術、新世代のEVバッテリーコーティングを実現』、『AIデータセンター向け超電導ソリューションのVEIRが資金調達』、『加Mangrove Lithium、新リチウム精製施設建設に向け3,500万ドル調達』、『SafelyYou、転倒検知センサーの普及拡大に向け4,300万ドルを調達』、『キャピタランド、日本初のデータセンター開発に7億ドルを投資』、『シンガポールのfileAI、バックオフィス向けソリューションで1,400万ドルを調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第119回」をお届けします。
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パリを拠点とする量子コンピューティングのAlice & Bobは、2030年までに世界初となる 「有用な 」量子コンピュータを構築するため、最新のシリーズBラウンドで1億ユーロを調達した。2020年に設立された同社は、エラーを受け入れ、それを回避することができる、フォールトトレラント量子コンピューターの開発を目指している。このソリューションは、同社独自の「キャットキュビット」技術に基づいている。これは、シュレーディンガーの猫と、何かが一度に「2つの状態」にあるというアイデアにちなんだもの。事実上、この量子コンピュータは、一部の故障(半分)を受け入れ、他の不具合を修正する。この設計はマシンを単純化し、量子技術の商業化を加速させると期待されている。今回のシリーズBに先立ち、Alice & Bobはすでに1億3,000万ユーロの資金を調達し、従業員も110人以上を擁している。今後、今回の調達資金の半分近くを研究所と生産施設の建設資金に充てる予定だ。
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合成燃料を開発するドイツ発INTERATECは、その生産規模拡大に向けて、ベンチャーデットと欧州投資銀行(EIB)およびBreakthrough Energy Catalystからの助成金を合わせて7,000万ユーロを確保した。2016年に設立されたINTERATECは、再生可能な水素と生物起源のCO2を組み合わせることにより、電子燃料と化学薬品を製造している。このソリューションは、EUが提案した法案「ReFuelEU Aviation 」を通じて、2030年までに合成燃料を最低1.2%、2050年までに35%使用することを義務付けている航空分野など、脱炭素化が困難な分野への応用が想定されている。この7,000万ユーロのパッケージは、フランクフルトにある同社の合成燃料工場に資金を提供するもので、最大2,500トンの燃料と化学薬品を生産する予定である。工場には精製施設も併設され、合成原油を工場内で精製し、認証可能な、すぐに使用可能なサステナブルな航空燃料に変換することもできる。なお、2025年に稼働予定の同工場は、欧州最大の合成燃料工場となる。
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英国ケンブリッジに本社を置き、産業用インクジェット技術を開発するXaarが、電気自動車(EV)用バッテリーの製造技術革新に向けて、中国のShifang Intelligent Manufacturing TechnologyおよびShenzhen Omijia Intelligent Technologyとの提携を発表した。EVのバッテリーは、充電によって発生する熱や、高密度に詰め込まれたバッテリー構成による磨耗や損傷に対応するために、特殊なコーティングを必要としている。しかし、PETフィルムのような従来のコーティングは、こうした要件を満たすのに苦労してきた。そこで、インクジェットを専門とするXaarは、バッテリー分野専用に設計されたプリントヘッドを開発した。Xaarのプリントヘッドを採用して以来、Shifangは従来のコーティングと比較して材料コストを30%削減するなど、大幅な改善を達成した。同様に、Shenzhen OmijiaもこのプリントヘッドによるUVインクジェットソリューションを開発し、リチウムイオン電池の絶縁コーティングにおける重要な課題に対処してきたという。
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シンガポールを拠点とするCapitaLand Investment Limited(CLI)は、日本での初のデータセンター開発に向け、大阪の土地を取得した。総額7億ドル以上を投じ、AI対応の最先端設計と持続可能性を重視した施設の建設を進める。設計・建設・認定は、米国の環境性能評価システム「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」ならびに同等の日本のグリーン認定基準に準拠する。この施設では、先進的な冷却技術を含む省エネソリューションを導入し、温度管理における業界のベストプラクティスを採用することで、エネルギーと水の使用効率を最大化する。また、オゾン層破壊係数がゼロ、または地球温暖化係数(GWP)が100未満の製品を使用することで、環境負荷を低減する。CLIは本計画を通じ、2021年以降、グローバルポートフォリオに23のデータセンターを追加している。キャピタランド・グループ全体では、アジアおよび欧州うで27ヶ所にのぼるデータセンターを展開し、約800MWの電力供給能力を確保。完成ベースで約44億ドルの資産を運用している。
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カナダのバッテリー素材スタートアップMangrove Lithiumは、実証規模の新リチウム精製所を建設するため、三菱商事、旭化成、Breakthrough Energy Ventures、BMW i Ventures、InBC Investment Corp.などから3,500万ドルを調達した。ブリティッシュコロンビア州デルタで今年後半操業を開始する新施設は、年間約25,000台の電気自動車に搭載するリチウムを生産する予定だ。同社の画期的な電気化学精製プロセスは、塩水、硬岩、粘土など、さまざまなリチウム原料を、より少ない工程で、より低コストでバッテリーグレードリチウムへ変換する。有害な試薬の排除、廃棄物の削減、そして生産コストとC O2を削減する革新的な電気化学プロセスが採用されている。この建設予定の施設は、北米初のリチウム精製プラントとして、不安定さが加速する国際情勢の中、北米エネルギーの自立性を強化すると期待されている。2021年よりパイロットプラントで技術を改良してきたMangroveは、新施設で生産されるリチウムの提供先として、世界的な電池メーカーをすでに顧客として確保している。
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65歳以上の高齢者の多くが転倒によるけがを負う中、現状ではその多くが適切なタイミングで医療的処置を受けることができていない。実経験から祖母と叔母がアルツハイマー病と闘う姿に影響を受けたGeorge Netscher氏は、2015年に博士課程の研究の一環としてAI搭載カメラとセンサーを使用し、高齢者向け住宅での転倒を検知するという課題解決に貢献する技術を開発した。そんなNetscher氏が設立したSafelyYouがこの度、Touring Capitalが主導しSamsung Nextを含む投資家が参加したシリーズCラウンドで4,300万ドルを調達、総資金調達額が1億ドル超となった。SafelyYouのシステムは転倒をリアルタイムで検知し、スタッフにアラートを送信することで迅速な対応を可能にする。 遠隔地の臨床チームが転倒事故を検証、根本原因の分析を行い、今後のリスクを軽減するための提案を行う。 他の転倒検知ソリューションとは異なり、SafelyYouはウェアラブル機器を必要とせず、誤報も最小限に抑えることができる。 COVID-19による困難な時期を乗り越え、同社は現在、約1,000のシニアコミュニティにサービスを提供している。
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シンガポールを拠点とするCapitaLand Investment Limited(CLI)は、日本での初のデータセンター開発に向け、大阪の土地を取得した。総額7億ドル以上を投じ、AI対応の最先端設計と持続可能性を重視した施設の建設を進める。設計・建設・認定は、米国の環境性能評価システム「LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)」ならびに同等の日本のグリーン認定基準に準拠する。この施設では、先進的な冷却技術を含む省エネソリューションを導入し、温度管理における業界のベストプラクティスを採用することで、エネルギーと水の使用効率を最大化する。また、オゾン層破壊係数がゼロ、または地球温暖化係数(GWP)が100未満の製品を使用することで、環境負荷を低減する。CLIは本計画を通じ、2021年以降、グローバルポートフォリオに23のデータセンターを追加している。キャピタランド・グループ全体では、アジアおよび欧州うで27ヶ所にのぼるデータセンターを展開し、約800MWの電力供給能力を確保。完成ベースで約44億ドルの資産を運用している。
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シンガポールを拠点とする法人向けAIソリューションスタートアップのfileAIが、シリーズAラウンドで1,400万ドルを調達した。本ラウンドは、 Illuminate Financial、Antler Elevate、Insignia、Heinemann Groupなどの投資家が主導し、これにより同社の累計調達額は2,000万ドルを超えた。本資金を活用し、金融サービスおよび保険会社、会計、製造などの分野での展開を強化するとともに、AIファイル管理の専門性を深めるための製品開発を推進する。fileAIのプラットフォームは、高度なAI技術を活用し、あらゆるファイルや文書からのデータ抽出・整理・拡充を簡素化することで、非構造化データの処理を大規模に自動化する。すでにシンガポール、オーストラリア、タイ、香港、日本、米国など多地域に顧客を抱えており、MS&AD、東芝、EY、KFCといったグローバル企業に採用されている。
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