『生物多様性の精密モニタリングGentian、 MS&ADグループ会社と提携』、『AI搭載ロボットアームのNomagic、4,400万ドルを調達』、『蘭QuantWare、大規模量子プロセッサー開発に向け2,000万ユーロ調達』、『ワークフロー構築支援のTaktile、5,400万ドル調達』、『Skylo、衛星D2D接続の加速化に3,000万ドルを調達』、『AIベースの鉱物発見の成長目指すVerAI、2,400万ドルを調達』、『マレーシアのデジタル投資、2024年に過去最高の370億ドルを記録』、『インドネシアのBumame、プレシリーズA資金調達を実施 』を取り上げた「イノベーションインサイト:第123回」をお届けします。

英国を拠点にAIを活用した生物多様性モニタリング技術を開発するGentianが、MS&ADインシュアランスグループのMS&ADインターリスク総研と提携を発表した。2020年に欧州宇宙機関(ESA)の支援を受けて設立されたGentianは、超高解像度の衛星画像と機械学習に基づき、自然資本の定量評価に関するサービスを提供している。これらのソリューションは、生物多様性への配慮を業務に取り入れたいと考える企業、政府、自治体に導入されている。MS&ADインターリスクは、生物多様性と自然資本のコンサルティングに25年以上携わり、2022年以降は自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)に関するコンサルティングサービスも提供してきた。今後Gentianの生物多様性への影響とリスク評価の技術をコンサルティングサービスに統合し、顧客がTNFDの枠組みを理解し、彼らの活動が自然や生物多様性に与える影響を可視化、測定、監視できるよう支援する。

ポーランド発ロボティクス企業のNomagicは、開発する倉庫自動化ソリューションの技術開発促進と北米など欧州域外の市場への事業拡大のため、最新のシリーズBラウンドで4,400万ドルを調達した。 2017年設立のNomagicは、物流業務向けにピッキング、梱包、移動用のロボットアームを製造している。Nomagicのハードウェアのほとんどは既製品である一方、AIとソフトウェアを通じてイノベーションをもたらしている。同社はコンピューター・ビジョンと機械学習を用いて、あらゆる物体を使用したアプリケーションのユースケース、またロボットがそれらの物体をどのように移動させ、梱包し、取り扱うべきかという点に関する「ライブラリ」を構築した。これにより、このロボットアームは異なるユースケースにも容易に採用可能となる。なお、同社によると、eコマースや製薬などの分野からの需要増加により、昨年の年間経常収益が220%増加したという。

オランダ発量子コンピューティングのQuantWareが、量子プロセッサー(QPU)のスケーラビリティの課題に取り組むため、シリーズAラウンドで2,000万ユーロを調達した。現在の量子システムのほとんどは、より小さなプロセッサーを連結させることに依存しており、非効率的でスケールアップが難しい。一方で2020年に設立されたQuantWareは、より多くの量子ビットを1つのチップに集積することで、複数の小規模システムをネットワークでつなぐよりも強力で、エラーの発生も少ない量子システムの開発に取り組んでいる。同社は 「VIO 」と呼ばれる3D量子チップ・アーキテクチャを開発し、自社でQPUを開発・販売するとともに、ファウンドリー・サービスやパッケージング・サービスを通じて他社にもこの技術を提供している。グーグルやIBMなど量子コンピュータにおける既存プレーヤーが100〜1000量子ビットであるのに対し、QuantWareのソリューションは、1つのプロセッサで100万量子ビットを超える量子コンピュータを実現する。今回の資金調達により、QuantWareはVIOの開発を加速し、チップ製造設備を増強する予定だ。


2020年にハーバード大学の同級生である2名によって設立されたフィンテックスタートアップのTaktileは、Balderton Capital主導、その他Index Ventures、Tiger Global、Y Combinator、OpenAIの取締役ラリー・サマーズ氏なども参加したシリーズBラウンドで5,400万ドルを調達した。これにより、同社の資金調達総額は7,900万ドルに達した。Taktileは、フィンテック企業がIT部門を介さずに自動化された意思決定ロジックを修正できるようにすることで、財務上の意思決定を簡素化することを目指している。同社のプラットフォームにより、リスク管理チームやエンジニアリングチームは、ワークフローの作成と管理、データの統合、予測モデルの監視、A/Bテストの実施が可能になる。すでにZilchやMercuryなどのクライアントが、与信承認の調整や不正チェックなどの業務にTaktileを導入している。同社は2024年には年間継続収益が3.5倍に成長し、急速に事業を拡大する中、投資家の高い需要を受け、今回の追加資本調達に至ったという。この最新資金は、製品開発と企業向け事業拡大に充てられる予定だ。

衛星通信のSkyloは、NPG Capital主導、Westly Group、Intel Capital、BMW I Ventures、Samsung Catalyst Fundが参加した資金ラウンドで3,000万ドルを調達、調達総額も1億8,300万ドルとなった。衛星電話は目新しいものではないが、Skyloはチップセット、端末、ネットワーク事業者を統合することで、アクセシビリティ重視の開発を試みている。最近の調査では、米国人の76%が、携帯電話の電波の届かないエリアに不満を感じていることが明らかになった。直接デバイス間通信(D2D)戦略を加速させ、グローバル事業拡大と技術エコシステムの強化を目指すSkyloのD2Dプラットフォームは、世界中で10億台以上のデバイスをサポートしており、すでに何百万台ものデバイスが現在アクティブとなっている。米国、カナダ、欧州、ブラジル、オーストラリア、ニュージーランドなどで存在感を強める中、今後アジア太平洋地域への拡大に戦略的フォーカスを置くという。また2024年にはD2Dエコシステムの実現を優先し、Viasat、Inmarsat、EchoStarなどと提携、今年はより多くのパートナーと対応端末の追加を目指す。

VerAI Discoveriesは、Insight Partners主導、既存投資家のBlumberg Capital、Chrysalix Venture Capital、Orion Industrial Venturesなども参加したシリーズBラウンド初期クロージングで2,400万ドルを調達した。この資金調達により、VerAIの60以上の鉱物プロジェクトの試験と経済開発、ポートフォリオの拡大を加速させ、AIディスカバリープラットフォームがさらに強化されることになる。VerAI独自のAI技術は従来の探査方法とは異なり、重要な鉱物の隠れた鉱床を高精度で特定する。森林や氷床、砂利層などの地表を覆う地形の下にある鉱床も検出できるため、コストとリスクを削減しながら発見の成功率を高めることができるという。VerAI は、今回の投資はAI主導のアプローチを裏付けるものであり、未開発地域の価値発見を解き放つきっかけにもなると主張する。鉱物探査分野は、従来から技術革新が遅れている分野とされてきたが、VerAIのプラットフォームは、鉱物探査に変革をもたらし、世界経済の成長、自立的エネルギー確保、先進的な防衛ソリューションに貢献する可能性を秘めている。


マレーシアにおけるデジタル投資が、2023年の105億ドルから、2024年には過去最高の368億ドルに達した。マレーシア・デジタルエコノミー公社(MDEC)は、同国の安定した政治基盤とビジネスに友好的な政策が、テックハブとしての地位を強化に繋がったとした上で、さらに強固なインフラと戦略的な官民パートナーシップが投資家の信頼を支え、マレーシアをデジタルハブのリーダーへと押し上げているという。一方で、支援的な規制枠組みや、AIおよび量子コンピューティング分野への積極的な取り組みが、成長を加速させ、高付加価値のグローバル投資を誘致している。また、マレーシア投資開発庁(MIDA)が昨年発表したデータによると、承認済み投資も2023年の741.4億ドルから、2024年には前年比14.9%増の3 851億ドルまで拡大している。MDECの最新報告は、この成長を裏付ける内容となっている。

インドネシアのヘルステック企業Bumameは、Alpha JWC Venturesが主導し、500 GlobalおよびKopital Venturesが参加したプレシリーズAラウンドを完了した。Bumameは今回の資金調達により、インドネシアにおける総合ヘルスケアパートナーとしての地位を確立し、同国全体に対する予防的かつ積極的な医療提供の強化を図るとしている。同社の声明によれば、個人の健康管理を支援するというミッションの加速にも寄与する見込みだ。また、この新たな資金を活用し、デジタル変革を推進し、ヘルスケアサービスの提供範囲を拡大する計画である。特に、早期診断、迅速かつ正確な検査結果の提供、個別ニーズに対応した健康インサイトの提供に注力することで、ユーザーが自身の健康に関するより適切な意思決定を行えるよう支援する。さらに、本投資により、Bumameはシームレスでテクノロジー主導の顧客体験の開発を強化し、イノベーションと医療アクセシビリティの向上に取り組む方針である。

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