『エネルギー制御ソリューションの独Tado°、パナソニックから資金調達』、『英Alloyedのアディティブ・マニュファクチャリング技術に日本企業が出資』、『最新の欧州ディープテック・レポートが発表に』、『Terabase、太陽光発電所向けロボット技術で1.3億ドルを調達』、『コンプライアンスの自動化目指す Norm Ai、4,800万ドル調達』、『コンプライアンスの自動化目指す Norm Ai、4,800万ドル調達』、『Google CloudとBCG、インドネシアにAIイノベーションセンターを開設 』、『シンガポールのBetterX、海外市場拡大に向け資金調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第125回」をお届けします。

IoTを活用した空調制御プラットフォームを開発するミュンヘン発Tado°が、パナソニック空質空調社から3,000万ドルを調達した。今回の投資は昨年に発表された業務提携に基づくもので、今後パナソニックのヒートポンプ技術とTado°のスマート暖房制御およびエネルギー管理サービスを統合する想定だ。2011年に設立されたTado°は、スマートサーモスタットと家庭の冷暖房システムを管理するためのプラットフォームを提供している。例えば、ジオフェンシングが部屋の占有率に基づいて設定を調整する一方、天候適応機能は天気予報に基づいて冷暖房を変更する。またTadoのインテリジェント・スケジューリングにより、ユーザーは個人的な温度プランを設定でき、自動化機能により、手動入力なしで空調を管理できる。このシステムは、さまざまなメーカーの暖房、床暖房、ヒートポンプ、エアコンに対応可能だという。Tado°によると、これらの機能を活用して実際のニーズに基づいた冷暖房の調整、そして無駄な消費を防ぐことで、エネルギー使用量を最大28%削減する。

オックスフォード大学のスピンアウト企業であるAlloyedが、開発する航空宇宙および電子機器業界向けのアディティブ・マニュファクチャリング・ソリューションのために、日本のスパークス・アセット・マネジメントと日本政策投資銀行が主導したシリーズBラウンドで、3,700万ポンドを調達した。2017年設立のAlloyedは、金属合金の開発とアディティブ・マニュファクチャリング関連サービスを専門に、人工衛星用の軽量アンテナや構造部品、ジェットエンジン用の耐高温合金、さらには宝飾品用の精密部品、バーチャルリアリティヘッドセットなどのウェアラブル、スマートウォッチなど幅広い産業で活用され、現在はBoeing、Microsoft、Anglo American、BMWなどを顧客に持つ。今回の調達資金は、英国と米国における同社の製造施設の拡張と、改良合金および合金部品の設計・加工向けのデジタル・プラットフォームの開発加速に充てられる予定だ。

欧州ディープテック・セクターに関するDealroomの最新レポートによると、2024年のDeepTech VCの資金調達額は151億ドルにのぼり、同域内におけるVC資金調達総額の3分の1を占めた。調達総額の上位3ヶ国は、英国(42億ドル)、フランス(30億ドル)、ドイツ(27億ドル)と変わらない一方で、2023年との前年比で78%の伸びを達成したフィンランドのような国も存在感を見せた。ディープテックの成功は、強力な学術基盤に起因する。欧州には世界トップクラスの研究機関トップ10のうち40%が集中している。また調達額で顕著な成長を見せたセグメントには、6億4,000万ドルのシリーズB資金を調達したMistralなどが活躍し、前年比113%増の30億ドルに達した 「Novel AI」、2億1,500万ユーロのシリーズE資金を確保したグリーン水素のSunfireを筆頭に前年比75%増の11億ドルを調達した「新エネルギー」、さらにAIを活用したタンパク質工学に取り組み、シリーズBで7,300万ドルを調達したCradleが属する「化学・生物学」などの分野が挙げられていた。


太陽光発電所の建設におけるAIおよびロボット支援ソリューションの加速化を図るTerabase Energyが、SoftBank Vision Fund 2が主導し、Breakthrough Energy Ventures、Fifth Wallなどの既存の投資家も参加したシリーズCラウンドで1億3,000万ドルを調達した。2019年の創業以来、2億ドル以上の資金調達を確保し、米国全土で12ギガワット以上の太陽光発電プロジェクトを支援してきた同社プラットフォームは、ロボット工学、AI、ソフトウェア、自動化、プラント制御を統合し、ユーティリティ規模のソーラープロジェクトの効率性と拡張性を向上させる。2026年までに数百メガワットのソーラー発電容量展開を目指し、ロボット支援型組み立てライン「Terafab」の拡大を図る。同ソリューションは、設置の生産性を2倍に高めるだけでなく、品質向上や作業員の安全性強化にも貢献する。エネルギー新時代の拡張可能なエネルギーソリューションの必要性に応えるため、再生可能エネルギーインフラを革新するTerabaseの役割はさらに大きくなるだろう。

AIによるコンプライアンスの自動化を推進するNorm Aiは、Coatueが主導し、Vanguard、Bain Capital、SalesforceのCEOマーク・ベニオフ氏などが参加した最新資金ラウンドで4,800万ドルを調達し、総資金調達額も8,700万ドルとなった。同社は、AI主導のコンプライアンスチェックをビジネスプロセスに組み込むことで、規制コンプライアンスの変革を目指している。独自のプログラミング言語により、企業ポリシーや政府規制をデシジョンツリーに変換し、AI生成コンテンツ、法的合意、マーケティング資料など、さまざまなドメインにおけるコンプライアンスを評価する大規模言語モデルを可能にする。同社のAIエージェントは、社会保障法や医療保険制度改革法などの文書を数秒でスキャンし、複雑な規制に対応するための手助けも提供する。さらに、実行可能なコンプライアンスに関するフィードバックを提供し、承認後には推奨事項を実行することができる。規制の需要が高まる中、法務およびコンプライアンス技術市場は、2023年の109億ドルから2034年には219億ドルに成長すると予測されている。

ライセンス取得済みコンテンツのみでモデルを訓練するというユニークなアプローチを取るBriaは、Red Dot Capitalが主導するシリーズBラウンドで4,000万ドルを調達した。最新資金で同社は、音楽、動画、テキストへの製品拡大とチームの成長を支援する。Briaは現在、Getty Imagesを含む約20社のパートナーから画像を入手し、コンテンツの持つ全体的な影響力に基づいて画像所有者に報酬を支払っている。世界的に共通するデータセットを使用することで、コンプライアンスを確保しながら、AI生成ビジュアルのバイアスに対処することを目指している。 Briaは、PhotoshopやFigmaなどデザインツールとの統合を提供しており、企業が自社のブランド資産でモデルを微調整できるAPIも提供する。これにより、データおよび生成されたコンテンツの所有権は顧客が保持できる。サブスクリプションおよび使用ベースの価格モデルで30以上のAPIを40社ほどの顧客に提供し、年間収益成長率も400%を達成したBriaは、競争の激しいAI生成コンテンツ市場で確固たる地位を築いている。


Google Cloudとボストン・コンサルティング・グループ(BCG)は、インドネシアにおけるAI活用の課題に対応し、企業のイノベーション推進を支援するため、「AIイノベーションセンター」の開設を発表した。本センターは、官民組織が業務プロセスを再構築し、生産性向上や新たな顧客体験の創出、さらにはAIを活用したビジネス機会の創出を支援することを目的とする。企業に対しては、AI導入の専門知識、テクノロジーおよびトレーニングを提供するとともに、AIのビジネスユースケースの優先順位付け、実稼働パイロット版/最小実用製品(MVP)の開発、チェンジマネジメントプロセスの支援を行う。また、AI実装をビジネス目標に整合させるための強固なガバナンス体制も提供する。同センターのAIサンドボックスは、Google Cloudの統合AIスタック(高性能AI最適化インフラ、Vertex AIプラットフォーム、基礎モデル、ローコード開発ツールなど)上に構築されている。これに、BCGの戦略・業界知見、実装ノウハウが組み合わさることで、企業のAI活用を加速させるという。

シンガポールを拠点にデジタル資産に特化したB2Bプラットフォームを提供するBetterXは、最新のプレシリーズAラウンドで172万ドルを調達した。本ラウンドには、既存投資家であるAura GroupやTibraの共同創業者Kinsey Cotton氏に加え、新規投資家としてシドニーのGrand Prix Capitalが参加。さらに、Scalare Partners、Wholesale Investor、B7 Capital、Audacy Venturesも出資した。BetterXは、ファイナンシャルアドバイザーが顧客に代わってデジタル資産を安全に取引・管理できるB2Bプラットフォームを開発している。最高水準のセキュリティ、カストディ、規制コンプライアンスを満たす設計となっており、トークン化、取引、ポートフォリオ管理のための機関投資家向けインフラを構築する。同これにより、セキュリティ、資産保管、規制遵守といったデジタル資産市場の主要課題に対応することを目指す。 今回の調達資金は、アジア太平洋地域をを中心とした市場拡大に充てられる予定だ。
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