『DeepMindのスピンオフ企業Isomorphic Labs、6億ドル調達』、『独Marvel Fusion、世界初のレーザー核融合発電所建設に向け資金調達』、『フィンランド、石炭の段階的使用廃止を前倒しで完全達成』、『高度に分散されたクラウド環境で動作するTemporal、1.4億ドル超調達』、『GridPoint、グローバル展開に向け4,000万ドルを調達』、『食品盛り付けロボット開発のChef Robotics、4,300万ドルを調達』、『シンガポール国立大学、東京にスタートアップハブを拡大』を取り上げた「イノベーションインサイト:第127回」をお届けします。

ロンドンを拠点とするIsomorphic Labsが、そのAI創薬技術で6億ドルを調達した。Google DeepMindからのスピンアウトとして2021年に設立されたIsomorphic Labsが開発するAI創薬エンジンは、分子の構造と相互作用を予測できる「AlphaFold 3」を含む様々なAIモデルに基づいている。このAIアプローチにより、これまで研究室で行われてきた長時間を要する実験作業の多くが、コンピューター上で行えるようになり、新薬候補化合物の設計が加速されるという。同社は既にNovartisやEli Lillyなどの製薬会社と戦略的研究提携を結んでいる。Isomorphic Labsは新たな資金を研究開発の加速と人材獲得に充て、2025年末までにAIが設計した同社初となる医薬品を臨床試験に投入することを目標としている。なお、同社の創業者は、このAI技術により2024年にノーベル化学賞を受賞している。

ミュンヘン発Marvel Fusionが、Siemens Energy VenturesやEuropean Innovation Council Fundなどが参加した最新のシリーズBラウンドで5,000万ユーロを確保し、今までの調達総額も1億1,300万ユーロに達したと発表した。2019年設立の同社は、初となるレーザーベースの核融合発電所を建設するため、高エネルギー・レーザー・システムを開発している。この技術が商業化されれば、核融合エネルギーにより化石燃料への依存削減だけでなく、競争力と信頼性のあるベースロード・エネルギーを提供が実現される。今回の調達資金をもとに、Marvel Fusionはその技術を研究開発段階から産業展開へと移行し、コロラド州立大学と共同で1億5,000万ドルのレーザー施設を建設する予定だという。また核融合発電所の概念設計を加速させるため、熱伝導や発電システムを含む施設の設計にリソースを提供可能なSiemens Energyとの産業提携も進めていく。

フィンランドは、稼働中の最後の石炭火力発電所の廃止により、予定より4年早くグリーン電力網の活用目標を達成したと発表した。2019年、フィンランド議会は10年以内にエネルギー用の石炭使用の禁止に合意した。この方針が電力会社と投資家に明確なシグナルとなり、2020年以降、風力発電は2倍以上に増加、国内エネルギーの4分の1を供給してきた。それと同時に、石炭による発電も73%減少し、エネルギー・ミックスに占める割合は1%未満となった。クリーン・エネルギーへの移行にもかかわらず、フィンランドの電力料金はスウェーデン、ノルウェーに次いで欧州内で3番目に安く、さらに石炭発電所の停止は地域暖房の平均価格を5.8%引き下げるという。またこの発電所停止により、フィンランドの総CO2排出量も2%近く削減されることになる。現在、OECD加盟国のうち既に14ヶ国が石炭に依存しない発電システムを導入している上、今後さらに13ヶ国が2030年までに同様の目標達成を目指している。


シアトル発Temporalは、Tiger Global主導の最新ラウンドで1億4,600万ドルを調達し、総資金調達額が3億5,000万ドル、企業価値も17億2,000万ドルとなった。マイクロサービス向けオーケストレーション・プラットフォームで知られる同社は現在、特にエージェント型AIを中心としたAI駆動型ワークロードのサポートに焦点を置いている。調達資金は研究開発、Nexus機能の拡張、Azureとのクロスクラウド可用性の向上、AIのユースケース開発に充てられ、EMEAおよびAPACへのグローバル展開も視野に入れているという。Uber出身のCEOとCTOによって設立されたTemporalは、Uberで彼らが開発したオープンソースのオーケストレーション・エンジン「Cadence」を基盤としている。既にNvidia、Box、Snap、Instacart、Stripeなどの企業がID認証、注文管理、AIエージェント統合などの複雑なワークフローの管理に採用している。現在、18万3,000人のアクティブユーザーと2,500社の企業顧客を抱えるTemporal、その収益は過去18か月で4.4倍に増加した。

バージニア州を拠点とするエネルギー管理スタートアップGridPointは、三菱商事が出資する気候技術ファンド、Marunouchi Innovation Partners(MIP) 主導、その他Goldman SachsやギリシャのOlympia Groupなども参加した資金調達ラウンドで4,500万ドルを調達した。 最新調達資金はAIやデータセンターによるエネルギー需要の高まりを受け、GridPointの日本および韓国への事業拡大に充てられる予定だ。同社のプラットフォームは、データ分析、機械学習、自動化を活用して、2万棟を超える商業用ビルにおけるエネルギー利用を最適化し、企業と公益事業者の双方に持続可能性と送電網の効率化をもたらす。また、特に送電網への負荷を軽減することで、電力会社も支援している。同社は2035年までにギガワット規模の分散型仮想発電所(VPP)の実現を目指している。特にデータセンター、AIへの投資、電化、製造業への投資がすべて電力システムに負担を強いている現状を踏まえ、GridPointとMIPのミッションが一致していることも今回の調達に繋がっている。

ロボットによる食事や弁当の盛り付けを専門とするサンフランシスコ発Chef Roboticsは、Avataar Venturesが主導し、Bloomberg BetaやPromus Venturesなども参加した最新のシリーズAラウンドで4,310万ドルを調達した。この調達資金により、生産展開が加速し、AIを搭載した「データエンジンフライホイール」が強化される。このエンジンは、食事の準備作業から収集した実データにより、モデルのパフォーマンス向上が可能となる。2019年に設立された同社は、米国で110万件以上の求人がある食品業界を、自動化に最適な分野としてターゲットに、これまでに2,000種類近い食材のデータを使用し、Amy’s KitchenやSunbasketなどのブランド向けに4,400万食以上の食事を盛り付け、出荷してきた。同社のAI駆動型ChefOSプラットフォームは、利用が増えるにつれて継続的に改善され、迅速な拡張性が期待されている。また機器の融資には、顧客の初期費用を削減するRobotics-as-a-Serviceモデルを採用している。


シンガポール国立大学(NUS)の起業部門であるNUS Enterpriseは先日、東京にて2拠点目となるスタートアップハブ、BLOCK71を開設し、日本での存在感を一層強化した。2024年11月に最初の拠点として名古屋に開設した施設に続き、同拠点は、NUSの主要パートナーである Central Japan Innovation Capital(CJIC)や京都大学らと連携し、スタートアップ、研究者および学生を支援するとともに、彼らを投資家と結びつけることを目的としている。これらのパートナーシップは、日本のスタートアップ・エコシステムの成長を加速させる取り組みと一致している。TAKANAWA GATEWAY Link Scholars’ Hubに位置するBLOCK71 Tokyoは、日本における東南アジアのテクノロジー主導型スタートアップの成長を支援するだけでなく、環境持続可能性、モビリティ、ロボット工学、スマートヘルスといった都市開発の分野に貢献し、さらには日本のスタートアップが東南アジアおよびその他の市場へ進出するために必要なリソースも提供する。
マレーシア発半導体集積回路(IC)設計会社のSkyeChipは、人材獲得、事業拡大、運転資本の強化に向けGobi Partnersから投資を確保した。こSkyeChipは、シリコンIPおよびカスタムASICを専門に、AIや高性能コンピューティング(HPC)といった最先端アプリケーション向けの半導体設計・開発を手がけている。その独自の知的財産(IP)、研究開発(R&D)への貢献、カスタムASIC設計への進出は、市場での地位を強化し、世界のチップ・エコシステム内でのマレーシアの地位を高めると期待されている。

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