『クリーンテック革命を担う、英インペリアル大と東大 』、『2023年、注目のスロベニアスタートアップ』、『欧州委、EU全域で週4日労働制を支持』、『遺伝子治療開発のElevateBio、約4億ドル調達』、『AIのAnthropic、シリーズCで4.5億ドル調達』、『銀行DX支援のNymbus、7,000万ドル調達』、『インドネシアのeFishery、ユニコーンステータス獲得』、『ベトナムStride、200万ドルのシードラウンド終了』を取り上げた「イノベーションインサイト:第34回」をお届けします。

英インペリアル大と東大、クリーンテック革命に向け提携
英インペリアル・カレッジ・ロンドンと東京大学が、クリーンテックとエネルギー研究のための大規模な戦略的連携を発表した。このパートナーシップは、G7サミットに先立つ日英ビジネスフォーラムでスナク英首相が発表したもの。両大学がそれぞれ日立製作所と有する共同研究関係に基づき、両大学の研究者がエネルギー、脱炭素、気候修復などの分野における研究プロジェクトや新技術について、緊密に連携することを目的としている。東京大学と日立は、H-UTokyo Labを通じて、エネルギーシステムやスマートシティなど幅広い分野で共同研究を行う一方、インペリアル・カレッジは、昨年発足した脱炭素・自然気候ソリューションセンターを通じて、ネットゼロへの移行を推進するための基礎・応用研究において日立と協力している。 
2023年、注目のスロベニアスタートアップ
スロベニアは、成長中の経済、戦略的な立地、政府の支援、民間投資の増加により、スタートアップに優しい国として台頭しつつあり、多様性に富んだイノベーションエコシステムを育んでいる。同国で2019年以降に設立された注目スタートアップには、独自のタンパク質テクスチャリング技術を活用し、植物由来のステーキを製造するJuicy Marblesや、クラシックなオートバイのデザインと電気推進技術の融合に取り組むFlux Performanceなどがある。また、ソフトウェアソリューションも発展しており、機械学習と人工知能モデルを使用して、地理空間データの処理タスクを自動化、実用的な洞察をより迅速に生成するFlaiや、不動産開発を最適化してROIを最大化する都市設計ソフトウェアプロバイダーのAgiliCity、メーカーが複雑な仕様の製品などをオンラインで販売するためのコンフィギュレーターを提供するSaleSquezeなどがある。 
欧州委、EU全域で週4日労働制を支持
欧州委員会のニコラ・シュミット雇用・社会権担当委員は、特に労働力不足に直面するセクターにおいて、EUは週4日労働制の導入を推進すべきだと主張した。既にドイツなどでは、輸送部門を中心にこの制度を導入している企業もあり、ポルトガルでも、Decent Work Agendaのもと、収入を減らすことなく自主的に週4日制を試行するパイロットプロジェクトが計画されている。同様のプロジェクトは、昨年英国でも実施され、キヤノンの英国法人を含む60社が減給なしの週4日勤務プログラムに参加した。シュミット氏は、EUの最大の問題は、失業ではなく労働力不足であると主張し、労働力の確保に苦戦している分野こそ、このようなプログラムを導入することで、企業の魅力を上げることができる可能性があると提案している。

遺伝子治療開発のElevateBio、約4億ドル調達
細胞および遺伝子治療の設計、生産、開発を行うElevateBioが、AyurMaya Capital Management Fundが主導し、SoftBank Vision Fund、伊藤忠、EDBIなどが参加したシリーズDラウンドで約4億ドルを調達した。同社のエコシステムは、2021年に子会社化したフルスペクトラムの遺伝子編集プラットフォームであるLife Edit、独自の人工多能性幹細胞 (iPSC) プラットフォーム、RNA、細胞、タンパク質、ベクター工学など複数の研究開発技術プラットフォームから構成される。加えて、マサチューセッツ州ウォルサムにある14万平方フィートの倉庫施設における、エンドツーエンドの遺伝子医薬品製造、およびプロセス開発事業であるBaseCampと組み合わせて、高度な治療薬の発見と開発を支援する。ElevateBioは今回調達した資金を、遺伝子治療製品の設計・製造能力の増強、そしてマーケット拡大に充てる予定だ。 
AIのAnthropic、シリーズCで4.5億ドル調達
サンフランシスコ発Anthropicが、Spark Capital主導のシリーズCラウンドで4億5,000万ドルを調達した。同社は2月、MicrosoftがOpenAIに10億ドル投資した直後、Googleから3億ドル注入を受けた経緯があり、今回のラウンドにはSalesforce VenturesやZoom Venturesなども参加した。同社のAIアシスタント「Claude」は、企業や消費者にポジティブな影響を与える、信頼性の高いAIサービスのために設計され、競合OpenAIのChatGPTなど、他のAIシステムよりも行動や制限について透明性が高く、敵対的な会話に対応したり、正確な指示に従うことが可能だという。過去数ヶ月間、NotionやDuckDuckGoなどとテストを実施した結果、初期顧客からのフィードバックはポジティブで、Claudeは他のAIよりも有害なアウトプットを出す可能性が低く、会話の舵取りがしやすいという。今回の資金調達によりAnthropicは、「Claude」の拡張、AIシステムが倫理的に振る舞い、潜在的な害を回避する方法の研究に注力する。 
銀行DX支援のNymbus、7,000万ドル調達
規模の大小を問わず、金融機関向けフルサービスのデジタルバンク立ち上げなどを支援するNymbusが、Insight Partners主導、同社の顧客であるConnectOne BankとPeoplesBankなどが参加したシリーズDラウンドで7,000万ドルを調達した。フロリダ発、2015年設立のNymbusは、ミレニアルとZ世代の顧客が、より良い金利を求めて従来の銀行に代わるオンラインサービスを探し始めた時期に登場した。銀行にとって、業務と商品の両方を近代化、デジタル化することで、変化する世界に適応するのは、技術的負債、サイロ化したITアーキテクチャをはじめとする理由で、極めて難しい。そんな中Nymbusは、APIアクセス、イベント駆動型のアラートと機能、ロボティック・プロセス・オートメーションなどの機能を含むクラウドベースのバンキング・ソリューションで金融機関をサポートする。今回の資本注入により同社は、商業銀行向けのコア取引処理エンジンとプラットフォームの拡張を図り、製品ポートフォリオの多様化を狙う。

インドネシアのeFishery、ユニコーンステータス獲得
インドネシアのeFisheryは、農家がエビの病気を検出し、池の管理を改善するためのIoT機器とアプリプラットフォームを提供している。同社は、アブダビを拠点とする42XFundがリードし、SoftBank Vision Fund IIとNorthstar Groupが参加したシリーズDラウンドで約1億ドルを調達したばかりだ。この資金調達により、同社の評価額は13億ドルになり、ユニコーンの仲間入りを果たしたことになる。魚の養殖は、養殖費全体の7割から9割が餌代に関連するため、初期コストが高い。eFisheryの自動餌付け機は、餌付けに関連する高い初期費用を最大で28%削減するとされ、現在、約6万人の農家と約28万個の池にサービスを提供している。さらに、同社のプラットフォームを通じ、農家が収穫物を直接販売できるため、中間業者の必要性が減る。また、農家と認定金融機関を結び、農家が高額な設備投資に向けた融資を申請できるようになるという。 
ベトナムStride、200万ドルのシードラウンド終了
ベトナム発クリーンテック企業のStrideは、一般家庭や企業にソーラーパネル、また環境に優しい住宅改修プロジェクトを設置するためのソリューションを提供している。さらに、顧客が金利なしの支払い、および最大36ヶ月の分割払いを選択できるようにしている。同社は、ベトナムの定評ある建設業者と協力し、高品質で、環境にやさしい設備を提供しており、環境への影響削減でなく、電気代の節約にもつながるという。 Strideは、シンガポールのClime CapitalとTouchstone Partnersの共同出資により、200万ドルのシード資金を調達したばかりで、今後ベトナム全土でより多くの家庭や中小企業へのクリーンエネルギーソリューションの展開を加速し、エネルギー費用の削減とベトナムのネットゼロ目標達成を支援できるようになる見通しだ。
植木 このみ Corporate Innovation Services, Intralink Limited イントラリンクについて イントラリンクは、日本大手企業の海外イノベーション・新規事業開発、海外ベンチャー企業のアジア事業開発、海外政府機関の経済開発をサポートするグローバルなコンサルティング会社です。