弊社COOを務めるジェレミー・ショー(Jeremy Shaw)は、先日ロンドンにて開催されたLondon Tech Weekに参加し、英国ハイテク・セクターの成長、また英国テック企業とアジア太平洋(APAC)地域の大手企業・投資家が双方とのコラボレーションをいかに重要視しているかを改めて肌で感じたと言います。本ブログでは、その背景について、ビデオや写真とともに概説します。
London Tech Week 2023
今年のLondon Tech Week(LTW)が終わった今、私は自信と前向きな気持ちでいっぱいです。なぜなら、英国のテック・コミュニティが、イノベーションとコラボレーションへの意欲とともに、それを世界的なサクセス・ストーリーに変える絶好のポジションにあるということを目の当たりにしたからです。 私は、最近までAPAC事業統括ディレクターとして、東京、香港、バンコク、シドニーなどの都市で勤務していました。しかし今回、ロンドンに異動してから初めて経験するロンドンの熱波の中、LTW内のあらゆるイベントを駆け巡りながら、テクノロジーとともに世界の差し迫った問題の解決に取り組む、何百もの英国スタートアップ・スケールアップ企業に感銘を受けました。 一方で、過去最大規模と言われるAPACからの使節団が訪れた今回のLTWにおいて、アジアを含む世界各地から、これらのイノベーションを促進するために金銭的支援を提供しようとする多くの企業代表団を目の当たりにし、とても嬉しく思いました。そして、その実現のために支援を約束する政府首脳陣の発言にも勇気づけられました。 しかし、実際にこの大きな目標を実現させるには、大変な努力が必要です。そして今、行動する時が来たのです。 詳しい話に進む前に、ぜひ弊社チームが作成した90秒のLondon Tech Week のショートムービーをご覧ください!
明るい未来をもたらすテクノロジー
LTWの開幕を告げるリシ・スナク英首相の基調講演では、英国が自らを人工知能の研究、開発、現場での応用、そして思慮深い規制における卓越した中心地として位置づけていることが明確になりました。 またナタリー・ブラック国際通商省アジア太平洋地域貿易担当長官も、AIに加え、量子コンピューティング、クリーンエネルギー(核融合を含む)、ヘルステック、フィンテック、サイバーセキュリティの開発においても、英国が世界をリードしていることを強調しました。
実際に、大学からのスピンアウト及び商業化までのパイプラインに対する制度的支援が強化されていることは明らかです。その結果、Darktrace、Tractable、Revolut、Oxford Nanoporeのような英国発ユニコーンの安定性は、今後数年で大きく拡大していくことでしょう。 しかし、成功は突然やってくるものではありません。 確かに、技術的な大躍進は研究室で起こるものの、商業的な成功を収めるというのは別の話です。資本、ノウハウ、グローバル市場へのアクセスがなければ、どんなに優れた発明でもその意味がなくなってしまいます。
APAC大手企業とのつながりを活用した事業拡大
近年の経済状況やパンデミックの余波により、ベンチャー・キャピタルの資金調達の流れは厳しくなっています。しかし、この伝統的な成長資本が手に入りにくくなる一方で、コーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)はここ数年でその規模を拡大しています。 加えて、特にAPAC地域において、M&Aや、テック企業との共同開発プロジェクトに取り組む大手企業の意欲は高まりを見せています。 その結果、これからさらに多くの英国テック企業が、成長するために必要なもの、すなわち投資家、パートナー、顧客をAPACに求めていくと想定されます。 そして、その兆候は既に現れています。 LTW初日、UK-APAC Tech Growth Programme(後述)の一環として、イントラリンクが運営を担い、エキサイティングなスタートアップ8社がプレゼンを行ったAioi R&D Lab – Oxford向けのピッチコンテストに参加してきました。このイベントには、同社が取り組む社会・地域課題の解決、また新たな価値共創に貢献できるソリューションを持つ企業が、保険業界だけでなく、気候変動、環境、ウェルビーイングなどの分野から選出されました(本イベントの詳細は、こちら)。
参加企業の一社であるBirdsEyeView TechnologiesのCEO、ジェームズ・レンデル氏からは、「プレゼンターの質、テーマともに、これまで参加したピッチイベントの中で断トツによかった」というコメントまでいただきました。 非常に光栄なコメントですが、私たちは、それ以上に重要なのは、その言葉にしっかり行動が続くことだと考えています。
APACとのパートナーシップ
私たちはLTWの期間中、イベントへの参加や、パートナー候補とのミーティング、「次の大物」をスカウトするためにAPACからロンドンを訪れたクライアント数社の代表団をサポートしました。 実際、LTWには過去最大のAPAC使節団が参加し、600人以上の投資家やバイヤーが訪れました。訪英したクライアントにアテンドする中で、私たちは、彼らがスマート・テクノロジーを活用した持続可能性の実現を常に念頭に置いていることを改めて実感しました。 例えば、AIはサステナビリティ・テックの重要な要素である一方、ヘルステックやクライメートテックにとっても中心的存在です。また、インシュアテック、フィンテック、バッテリー、半導体、EV、ADASなど、数え切れないほどの分野で基本的な役割を担っています。そしてそれこそが、Toyota、Samsung、MediaTek、Petronas、Telstra などが求めている技術なのです。 では、APACのグローバル大手企業からイノベーションに対する需要があり、英国テック企業からの供給も増加しているのにも関わらず、なぜ彼らのコラボレーション事例の急増を見受けることがないのでしょうか。 その答えは単純です。適切な時に、適切な場所でお互いを見つけることが難しいからです。
国境を超えた連携へのチャレンジ
LTW期間中にデロイト、英国ビジネス・通商部(DBT)、科学・イノベーション・技術省(DSIT)が主催したUK-APACテックカンファレンスでは、政府高官、業界リーダー、ベンチャーキャピタリスト、テック企業創業者など200人以上が、地域間連携の機会と今後の課題について議論しました。 この中で、日本をはじめ、ASEAN、韓国、台湾、オーストラリア、ニュージーランドとの連携機会について、代表団やパネリストが熱弁をふるう一方で、そのハードルについても議論が交わされました。 グラフェンスタートアップ、Paragrafのトム・ウィルソンCCOは、日本、台湾、韓国のような複雑な市場でテックビジネスを成長させるには、相当な忍耐が必要だと語りました。 またXRスタートアップVividQのダラン・ミルンCEOと、ユニコーン企業Tractableのパオロ・フェデーレ事業開発ディレクターもこれに同意し、アジア市場への早すぎる参入は、遅すぎる参入と同様にリスクが高いと付け加えました。
APAC大手企業は、このような英国テック企業の考え方を考慮する必要があります。 国境を超えた市場参入・提携のアプローチが千差万別であることは間違いありませんが、双方にとって何よりも重要なのは、下調べを怠らず、そしてターゲット市場を熟知しているローカルアドバイザーやパートナーに活用し、複雑なビジネス環境の違いに対応していくことにあります。 では、アジア大手企業はグローバルに事業拡大するために、そして最先端技術を取り入れるために、どのようなアプローチを取るべきなのでしょうか。
行動の時:Time for Action
その答えの一端は、LTW中に英国政府が発表した最も重要なイニシアティブのひとつ、「UK-APAC Tech Growth Programme」に示されています。そして、イントラリンクは、このプログラムを実現するためのパートナーに指名されたことを誇りに思います。 今後数年間、弊社は英国のスタートアップ、起業家、エンジニア、科学者をはじめとするテック・イノベーターが、APACでの事業展開、また同地域の大手企業との連携を目指すのに、適切なタイミングで適切な場所に身を置くことができるよう支援します(同プログラムの詳細は、こちら)。 このプログラムはセクターを問わず、社会にポジティブな影響を与えるテクノロジーにフォーカスを置いています。また、大きく成長する可能性がある組織であれば、あらゆる形や規模の企業に対応しています。だからこそ、私たちはこのプログラムを通じて、日本、そしてAPACの大手企業と英国テック・イノベーターとのイノベーション及びコラボレーションが、双方の世界的な地位を固める原動力になると信じています。
イントラリンクは、1990年の設立以来、Ceres、Oxford Nanopore、Dyson、VNC Automotive、Paragraf、Owen Mumford、Goodfellowなど、数え切れないほどの欧米スタートアップのAPAC進出をサポートしてきた経験から、このプログラムが成功すると確信しています! そして、この経験と同プログラムへの参加は、日本大手企業のイノベーション・海外新規事業開発をサポートする弊社のコーポレート・イノベーション・サービスにも大きな影響を与えるでしょう。政府の支援を受け、さらに拡大した弊社の英国におけるフットプリントにより、各クライアントに最適なスタートアップや最先端技術を発掘し、協業、投資、買収につなげるとともに、適切な現地パートナーや顧客の特定、またそれを踏まえたビジネスプランの構築により、エンドツーエンドのビジネス創出プロセスを強化できるようになります。このようなローカルに根差した知識と経験は、イノベーションを追求する日本企業にとって、貴重な資源となるのではないでしょうか。 英国テックシーンとの関係を深め、更なるイノベーションを実現するためには、今が行動を起こすときです。 LTWで各方面から耳にした大胆な発言が、具体的な行動に移されることを大いに期待しています。 英国エコシステムへのご関心がございましたら、こちらからお気兼ねなくご連絡ください。