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中国イノベーションシーンに迫る:第5回 アリババとB2B・Eコマースを中心に発展する、杭州

中国イノベーションシーンに迫る:第5回 アリババとB2B・Eコマースを中心に発展する、杭州

シリーズ5回目となる杭州は、B2Bオンラインマーケットプレイスから始まり、同都市内の活発なエコシステム構築に大きく貢献してきたアリババグループが本拠地を置く、重要なテクノロジーハブです。そして現在は、ユニコーン数でも北京と上海に次ぐ、また深センと並ぶ中国トップ4にまで進化してきました。今回は、その背景にも触れながら、杭州エコシステムの強みと特徴を特集します。

古くから交易で栄える浙江省の省都

東シナ海に面した杭州には、現在、アリババグループだけでなく、自動車メーカーのGeely、監視カメラのDahua Technology、キッチン家電のRobam Appliance、ヘルスケアポータルのDXY、オンラインコンテンツのNeteaseなどの有名企業が本拠地を構えています。また杭州は、アジア最大の日用品マーケットである義烏国際商貿城でよく知られる義烏にも電車で30分ほどの距離に位置しています。義烏は、「一帯一路」構想の起点でもあり、現在はドイツ、フランス、ロシア、イランなど欧州や中東の主要都市を結ぶスペイン・マドリッドとの世界最長ルート(8,111マイル)を含む、多くの国際長距離コンテナ列車のターミナル駅となっています。またWal-MartやDisney 向けに30憶足以上の靴下を生産することから、『靴下の町』という名でも親しまれ、宝石、クリスマスデコレーション、小物・アクセサリーに関連する取引も活発に行われています。

アリババグループに影響された政府の取り組み

義烏は、アリババの生き残りをかけ、ジャック・マー氏が路上で売るための卸売商品を調達した場所としても知られています。アリババによると、マー氏は義烏にインスパイアされ、当初のビジョンであった中国イエローページ(ビジネスディレクトリ)にもとづいた1688.com(アリババ初のEコマースサイト)を構築したといいます。 史上最高額(当時)でのIPOを行い、世界中から注目を集めたアリババは、国内の民間及び公共部門に対するスタートアップとイノベーションへの投資促進要因となり、その結果、杭州政府は、この地域の強みに焦点を当てた複数の工業団地を建設しました。 Eコマースにおいては、杭州中にブランチパークを持ち、国境を越えた電子商取引と製造業界の統合を促進するクロスボーダーEコマース総合パイロット地区(Cross-border E-commerce Comprehensive Pilot Area)が2015年に承認された上、2021年に開設された、400を超えるライブストリームホストと1,000の契約ホストを擁するライブストリームデモンストレーションセンター「Cloud Type City」や、製造業界で20億人民元(約3.1億ドル)の投資を惹きつけたTonglu Alfa Intelligent Manufacturing Industrial Park がインキュベーション施設とともに設立されました。またデジタルヘルスにおいても、ビッグデータを活用した医薬品の研究開発、がん検診における診断技術、オンラインフィットネスプラットフォームなどあらゆるデジタルヘルスプロジェクトとともに、ライフサイエンス分野の成長を目指したDigital Health Town も2020年8月にその一環として開設されました。

ビジネスにおける効率化を追求するエコシステム

 2020年、杭州には31社のユニコーンが、さらに142社のネクストユニコーンが位置していると発表されました。杭州エコシステムにおける大きなテーマは、『ビジネス上での障壁を取り除く』というアリババの使命を中心に展開しているため、スタートアップは関連するサポートインフラに強みを持っており、これらの有望企業もB2BサービスやEコマースに集中しています。注目すべきユニコーンには、B2B向けクロスボーダーペイメントソリューションを提供するLianLianPingPong、スマートホーム製品のグローバルIoTプラットフォームであるTuyaがあります。またアリババグループからも複数の企業が出現しており、スマートロジスティクスのCainiao、オンラインペイメントのAlipay、金融サービス・フィンテックのAnt Financialなどがその代表的な例として挙げられます。 その他にも、AI、自動車、ヘルスケアなどが鍵となるセクターとなっており、AIではロボティックスAIのRokid、クラウドコンピューターとビックデータソリューションのDT Dream 、インテリアデザイン向け分散コンピューターのKujialeが、さらに自動車業界でもバッテリー製造のA123、電気自動車メーカーのLeapmotor、中古車向けプラットフォームのSouche などが活躍しています。  

多数の起業家に適した人材と施設の存在

 杭州政府の共同報告(2021年)によると、中国の戸籍制度で認められる優秀な人材の国内移住に関するランキングで、長年の間1位を誇ってきました。つまり、さまざまな経験を持つ高学歴及び高収入の国内人材の多くが、他都市から杭州に流入しており、その人材レベルは国内随一と言っても過言ではありません。 実際に杭州には、68のイノベーションコワーキングスペース、48のテクノロジーインキュベーターが設置されている上、39ヶ所にプロジェクトのデモンストレーションとパイロットを行う専門地域、20ヶ所に大学付属の起業家センター、10ヶ所に海外からの帰国者向け起業家センターが存在するなど、そのイノベーションに対する取り組みは北京や上海と比べても劣りません。

最後に、、、

 アリババというEコマースジャイアントのもと、ユニークなエコシステムを築いてきた杭州は、特にEコマースやリテールだけでなく、今後デジタル化の一環として電子商取引との統合にも関心を持つメーカー(製造業界)にも適したテックハブであり、その優れたスタートアップへのアクセスには、VCやスタートアップへの直接投資に加え、ハブ中に広がるコワーキングスペースやインキュベーターとの提携など、あらゆる方法が考えられます。加えて、B2Bサービス、AI、ヘルスケアに関心を持つ企業にとっても、中国第3のエコシステムという投資・発展規模を考慮すると、新たな目のつけどころとなりうるテックハブかもしれません。 ビジネスにおける効率化を追求するエコシステムを構築する杭州にご関心をお持ちの方は、ぜひ info@intralink.co.jp までお声掛けください。

筆者について Emma Hsu(プログラム・マネージャー)

台湾出身、カナダ育ちの中英バイリンガルで、10年間カナダで就労していた経験がある。現在はイントラリンク上海オフィスで、プログラムマネージャーとして欧米組織向けにアジア市場開発をサポートする一方、中国における日本企業のオープンイノベーションプロジェクトにも長年携わってきた。

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