『蘭Meatable、アジア市場を目に食肉会社から戦略的出資』、『JAXAとESA、将来の宇宙開発における大型提携を発表』、『Atomico、10回目となるState of European Techレポートを公開』、『サプライチェーン・ロボティクスのPickle Robotが資金調達』、『三菱商事、Ampleのバッテリー交換技術に2,500万ドル出資』、『Enveda、天然化合物由来のAI駆動型創薬で1.3億ドル調達』、『アジアVCのGobi Partners、日本発の東南アジア投資強化へ』、『Web3ゲームプラットフォームEragon、フィリピン市場進出を計画』を取り上げた「イノベーションインサイト:第111回」をお届けします。
タイの食品会社Betagroのベンチャーキャピタル部門であるBetagro Venturesが、アジアの食肉会社として初めて、オランダを拠点に培養肉を専門とするMeatableに戦略的投資を行った。2018年に設立されたMeatableは、動物の幹細胞を使って筋肉や脂肪細胞を増殖させ、動物を傷つけることなく本物の肉を生成する方法で、従来の畜産に代わる技術の開発に取り組んでいる。このプロセスは精肉の提供までにかかる時間が従来の方法よりも16倍速く、温室効果ガス排出量も75%少ないという。今後Betagroとの提携は、持続可能な食品ソリューションへの需要が高まるアジア市場への参入とMeatableの成長をサポートするものと期待されている。なお、同社はシンガポール市場向けに養殖豚肉を生産するため、唯一の商業ライセンスを持つ養殖肉メーカーESCO Asterと2022年に提携した経緯を持つ。
JAXAと欧州宇宙機関(ESA)は、地球防衛、月および火星探査、宇宙からの温室効果ガス排出追跡などのテーマで連携を強化すると発表した。これには、2029年に地球に最接近する小惑星アポフィスを探査するESAのミッション「RAMSES」に関して、熱赤外カメラや太陽電池パドルなどの分野における協力加速への合意も含まれる。さらに両機関は、地球観測、特に施設から都市規模までの温室効果ガス排出の追跡、月探査や2030年代の火星への小型着陸ミッションの可能性を含む低軌道活動と探査、そしてESA主導のX線宇宙望遠鏡「New Athena」計画やその他研究イニシアティブなどでの協力に関しても議論を進めていく予定だ。
欧州を代表するVCであるAtomico が、10回目となるState of European Techの最新レポートを発表した。欧州のハイテク企業は、2024年に昨年の470億ドルに匹敵する450億ドルの投資を確保すると予想されており、同社が2015年にこのイニシアチブを開始以来、合計4,260億ドルを調達してきたという。またハイテク人材に目を向けると、欧州では2015年と比較して7倍となる350万人が雇用されており、エコシステムの規模が拡大し続けていることが見てとれる。欧州には現在、アーリーステージ企業が世界でも最大となる35,000社ほど存在する一方、スケールアップの数も増加しており、その数は10年前の8倍にのぼるという。また技術面では、炭素管理がシード企業にとって最重要テーマと特定された中、AIを含むディープテックも大きな関心を集めており、今年の域内資金調達額の33%が同分野に投入されている。この結果を鑑みて、Atomicoは、10年後には欧州のハイテク企業が8兆ドルの価値を誇り、2,000万人の従業員を抱えることになると予測している。
マサチューセッツ州ケンブリッジ発Pickle Robotは、Teradyne Robotics VenturesやToyota Venturesなどが参加したシリーズBラウンドで5,000万ドルを調達した。2018年設立の同社は、トラックやコンテナの荷下ろしという困難な物流作業の自動化に重点的に取り組んでいる。独自の「Physical AI」は、センサー、コンピュータービジョン、ロボット工学、AIを組み合わせ、物流センターの安全性と生産性を向上させるもの。2023年半ば以降、すでに輸入コンテナや国内フロアローダー式トレーラーから450万Kg以上の商品を処理済みだ。 フットウェア、キッチン用品、玩具など幅広い業界にわたり顧客を持ち、小包貨物への拡大も計画中だ。Pickle Robotは革新性、顧客価値、業務効率を重視し、今後10年以内に100万を上回る倉庫の作業工程自動化を目指しており、サプライチェーンにおけるロボット工学の革新のみならず、労働力不足への対応という重要な役割も果たすと期待されている。
サンフランシスコ発Ampleは、開発するバッテリー交換技術を世界的に拡大し、持続可能なエネルギーソリューションを推進するため、三菱商事から2,500万ドルの投資を確保した。三菱商事は再生可能エネルギー、蓄電、モビリティの専門知識を提供し、EVをガソリン車と同等に便利にするというAmpleのゴール達成に向けて伴走することになる。そしてこのパートナーシップを通じて、EV向けのよりクリーンで信頼性の高いエネルギーを促進し、世界的なインフラ拡大を支援する予定だ。三菱は、2030年までの温室効果ガス排出量50%削減、2050年までのネットゼロ達成を公約しており、EVの進歩と再生可能エネルギープロジェクトにおける重要な役割を果たしつつ、Ampleへの出資により、送電網の制約や充電時間の長さといった電動化の障壁を克服するというAmpleの使命を補完する。Ampleのグローバル事業展開と共に、多様なEVモデルをサポートするOEMとのパートナーシップが強化され、持続可能な交通手段が世界中で利用可能になる日も遠くないだろう。
2019年に設立されたEnveda Biosciences は、Kinnevik ABとFPVが主導し、Nature Conservancyを含む投資家が参加したシリーズCラウンドで1億3,000万ドルを調達した。EnvedaはAIを活用し、まだ未開拓にある天然化合物の可能性を掘り起こすことで、創薬の加速化を目指すバイオテック企業だ。 同社のプラットフォームは、AIモデルと体内の代謝物質を網羅的に解析する「メタボロミクス」を統合し、天然化合物の化学構造と生物学的活性を直接分析することで創薬を迅速化、ユニークな治療化合物の発見を狙う。また潜在的な化学物質の99.9%を占める、現在ほぼ未開拓の天然物質の多様性に焦点を置いているのが特徴だ。天然化合物を包括的にマッピングし、構造と生物学的機能を関連付けることで、的確な治療法の設計を目指している。Envedaの初候補薬となる第1相臨床試験中のENV-294は、アトピー性皮膚炎などをターゲットとしており、迅速な開発能力を示している。今回調達した資金により、複数に及ぶ候補薬の開発を促進と、差別化された医薬品パイプラインの拡大を図るという。
マレーシアと香港を拠点にアジア市場に注力するベンチャーキャピタルのGobi Partnersが、日本を拠点とするCross Capitalとの戦略的提携を発表した。この提携は、国境を超えたオープンイノベーションの促進と、日本から東南アジアの活気あるスタートアップエコシステムへの投資拡大を目的としている。両社によると、この提携によりスタートアップと投資家が、地域全体のリソースやネットワーク、さらにビジネス機会へのアクセスできるようになるという。またスタートアップの市場参入、現地化、および事業拡大を支援し、起業家と投資家双方に新たな成長機会を提供することを目指している。今回の提携を通じて、DX、インダストリー4.0、フィンテック、スマートシティ、サステナビリティ、モビリティ、ディープテック、デジタルヘルスなど幅広い分野での取り組みを強化する予定で、特にCross CapitalのFoF(ファンズ・オブ・ファンズ)を通じて、東南アジア、欧州、その他の主要市場における一流ベンチャーキャピタルファンドへの投資も計画している。これにより、日本の投資家は東南アジアの成長ポテンシャルを活用しやすくなるとともに、スタートアップも日本国内の広範なネットワークやリソースを活用できる見込みだ。
ベトナムに本社を置き、Web3ゲームのグローバルプラットフォームを提供するEragonが、フィリピンの活気あるゲーマーコミュニティと、ブロックチェーン技術の急速な普及が拡大に理想的な環境を提供しているとの判断に基づき、同国を次の主要市場と位置づけ、急速に拡大するそのゲーム市場への進出を目指している。特に、報酬を通じてプレイヤー体験を強化する「プレイ・トゥ・アーン(P2E)」セグメントに注力している。2024年8月にローンチされたEragonは、Aptosプラットフォーム上で最も注目されるゲームプラットフォームのひとつとして台頭し、ユニークアクティブウォレット(UAW)の数で世界第17位にランクイン。すでに50万人を超えるWeb3ユーザーを抱え、そのうち7万人がデイリー・アクティブプレーヤーとして利用している。また、これまでに5,000万件以上の取引を促進し、15社以上のゲーム開発者と提携しているという。
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