『Klein Vision、「空飛ぶ車」の技術を中国に売却』、『AIコンピュータービジョンRobovision、4,200万ドル調達』、『英WASE、廃棄物発電技術の拡張に向け990万ユーロを獲得』、『がん治療薬開発Avenzo、オーバーサブスクライブで1億5,000万ドル調達』、『Lightshift、ユーティリティ規模の蓄電池提供拡大で1億ドルを調達』、『Hume が5,000万ドルを調達、感情知能を備えたAIを構築へ』、『インシュアテックQoala、シリーズCで4,700万ドル確保』、『農業用クリーンエネルギーAlternōが150万ドルのシード資金を調達』を取り上げた「イノベーションインサイト:第77回」をお届けします。

スロバキアのスタートアップKlein Visionは、中国滄州に拠点を置くHebei Jianxin Flying Car Technology Companyに空飛ぶ車の技術をライセンス供与すると発表した。金銭的な詳細は明らかにされていないが、Klein Visionのプロトタイプの開発費は230万ドルとされている。この契約により、中国の特定地域で同社の「AirCar」を製造・販売する独占権が中国企業に与えられることになる。AirCarは、標準的な燃料エンジンを搭載し、およそ2分15秒で飛行機に「変身」できるロードベースのスポーツカーで、格納式の翼、折りたたみ式の尾翼、およびパラシュート展開システムを備えている。同社は2017年に開発を開始し、2022年1月にAirCarがスロバキア運輸局から耐空証明書を取得、スロバキア領内での飛行が合法になったと発表した。このニュースは、ブラチスラバで142回の着陸に成功し、40時間以上の試験飛行を行った後に発表された。

ベルギーを拠点とするAI搭載コンピューター・ビジョンのスタートアップRobovisionは、シリーズA資金調達ラウンドで4,200万ドルを調達したと発表した。同社は、機械メーカーや工業生産ライン向けに、エンド・ツー・エンドでコード不要のソリューションを提供し、コンピューター・ビジョンとロボットを統合してさまざまなプロセスを自動化できるようにしている。同社のソリューションは、ISO Groupによる年間10億本のチューリップの植え付け(世界生産量の約半分)や、日立製作所の半導体ウエハーの生産に使用されている他、スーパーマーケット、医療、廃棄物管理などでも使用されており、これまでパートナー企業に2億5,000万ドル以上の売上をもたらした。同社は今回の資金調達により、チーム規模の拡大、研究開発への投資、既存市場へのさらなる進出を図り、将来的にはドイツ、フランス、英国、中東、およびアジアに拠点を開設する予定だ。

英国を拠点とする廃棄物発電スタートアップのWASEは、2030年までに欧州で年間10TWhのバイオメタン生産能力を開発することを目標としているENGIEのCVC部門であるEngie New Venturesに加え、日立ベンチャーズも参加した資金調達ラウンドで990万ユーロ以上の資金を調達したと発表した。2017年に設立されたWASEは、バイオマスや廃水などの廃棄物からバイオガスを生産する電気メタン生成リアクター(EMR)技術を開発した。このリアクターは、バイオガスのメタン含有量を80%以上に高めることができるという(従来技術では通常50〜60%)。また、WASEのリアクターはプラグアンドプレイ式で、現在利用可能なものより50~70%小型化されている。同社は今回の資金調達により、事業規模の拡大、数百万ユーロにのぼる契約やプロジェクトの実行および製品ラインナップの拡充を図る。


次世代の腫瘍学的治療法の前進を牽引するAvenzo Therapeuticsは、New Enterprise Associates、Deep Track Capital、Sofinnova Investmentsなどが主導する1億5,000万ドル超のシリーズA-1ラウンドを完了し、2022年8月設立以来の調達総額は3億4,700万ドルに達した。FDA承認の阻害剤(薬剤)のほとんどは、細胞内に存在するCDK(サイクリン依存性タンパク質キナーゼ)のうち、CDK4/6を標的としており、その結果癌の中心となる異常な細胞増殖を防げるそうだ。しかし、ほとんどの患者は細胞周期の重要な転移を制御するCDK2経路の活性化によって、CDK4/6阻害剤に対する耐性を得てしまう。AvenzoのAVZ-021は、これを阻害することで効果を発揮し、CDK4/6阻害剤と併用することで、患者にできてしまう耐性を克服し、持続的な治療効果を誘導する。今回の調達資金でAvenzoは、新規のがん治療薬開発にさらに注力する予定だ。

Lightshift Energy (旧Delorean Power)は、Greenbacker Capital Managementから1億ドルの資本注入を受けたと発表した。ユーティリティ・スケールのグリッドストレージが電力管理に革命をもたらす中、Lightshiftのバッテリーソリューションは、エネルギーの信頼性とコスト安定性の両方を提供する。電気、ガスといった公益事業を担うユーティリティ企業は、農村部や都市地域社会のエネルギー回復力を高める、高コスト効率の持続可能な選択肢を求め続けており、Lightshiftはこうしたニーズに応えようとしている。20を超えるバッテリー・プロジェクトを契約し、4,000MW超のパイプラインを持つ同社は、アメリカの統合グリッドエネルギー転換を率いる。ヴァージニア州ダンビル市にある同社の10.5MWバッテリー施設は、市に4,000万ドル以上の節約をもたらす見込みで、より広範な送電網の信頼性をサポートすると同時に、地元の利用者にとっても大きな後押しとなる。

Hume AIは、EQT Venturesが主導し、Union Square VenturesやLG Technology Venturesなどの投資家が参加したシリーズBラウンドで5,000万ドルを調達した。Humeが他の数多くのAIモデルプロバイダーと異なる点は、AIアシスタントと、他の企業がその上にチャットボットを構築できるアシスタント用のAPIに加え、人間の感情を理解し、それに適切に反応し、ユーザーに答える基礎データの一部を作成することに重点を置いていることだ。Hume はまた、音声会話をインターフェースとして使用し、ユーザーのイントネーション、ピッチ、間、その他の特徴を音声だけで聞き取る。新たに、感情知能を備えた初の会話AIであるEmpathic Voice Interface (共感音声インターフェース)のデモも公開した。Humeは、「幸せ」や「怒り」といった人間の「普遍的な」ものだけではなく、より微妙で多次元的な感情を理解しようとしている。同社ウェブサイトにて、ユーザーから検出できる53の感情が確認できる。


インドネシアは世界で4番目に人口の多い国であるにもかかわらず、保険の普及率は4%未満と比較的低い。そんな中、事故、スマートフォン画面の破損、チケットのキャンセルなど、様々なリスクをカバーする個人向け保険商品を提供するインドネシアのスタートアップQoalaが、シリーズCラウンドで4,700万ドルを確保した。PayPal VenturesとMassMutual Venturesが共同主導した本ラウンドには、MUFG Innovation Partners、Omidyar Network、既存の出資者であるFlourish Ventures、Eurazeo、AppWorksが参加した。これにより、Qoalaの創業以来の資金調達総額は1億3,000万ドル以上となった。ジャカルタに本社を置く同社は、地元のトップ保険会社やeコマース企業と連携し、パーソナライズされた手頃な商品を提供するインシュアテック・プラットフォームを構築した。ウェブサイトやアプリ、オフラインの契約を通じて、様々な保険商品を500万人以上の顧客に販売している。

ベトナムのバッテリースタートアップAlternōは、インパクトVCのThe Radical FundとTouchstone Partnersの共同主導によるオーバーサブスクライブ・ラウンドで、150万ドル以上の資金調達に成功した。Alternōは、乾燥、保温、暖房など農業用途向けに、砂電池技術を活用した革新的な熱エネルギー貯蔵ソリューションを提供する。同社は、断熱砂と独自設計の熱伝導チューブを組み合わせた技術で特許を取得しており、低炭素農業へのシームレスな移行と、グリッドエネルギーやリチウムイオン電池などと比較したコスト削減を可能にすると主張する。Alternōは現在、250kWhから最大1.8MWhまでの産業用容量の砂電池システムを開発している。これにより、世界中の農場や農業企業でエネルギーを大幅に節約し、二酸化炭素排出量を削減することを目指す。

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