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中国イノベーションシーンに迫る:第1回国際色豊かなイノベーションハブ、上海

今回から、弊社上海オフィスより中国国内のスタートアップやアクセラレーター、また大手企業のイノベーション関連部署を直接訪れ、イノベーションエコシステムを調査、担当するEmma Hsuが執筆する新ブログシリーズ、「中国イノベーションシーンに迫る」を開始します。 「欧州イノベーションハブをめぐる」シリーズと並行して、中国各都市のイノベーションにフォーカスし、現地の最新情報をお届けします! 日本では最近深センが注目を集めていますが、初回となる今回は、100年以上前にアジアで初めて街灯を取り入れたことで知られる近代都市、上海です。同シリーズでも、ここ上海から始まり、北京、杭州、深セン、南京、広州など、スタートアップや革新的な技術が集まる都市を順にご紹介していきます。

多国籍都市が密集する沿岸都市

現在、上海には701社の多国籍企業の本社、及び451の開発研究所が所在しており、Microsoft for Startupsなどスタートアップを支援する投資企業は、フォーチュン500社に選ばれるような世界大手企業のデジタルトランスフォーメーションに対するニーズと、各社が持つポートフォリオ企業をマッチさせることで、同地での大企業のオープンイノベーションプログラムをサポートしています。 歴史的に、海に面しているという地理的な利点から、1800年代より英国人やフランス人などの外国人居留地となってきました。現在も、貨物積載量で世界一を誇る国際貿易港や、時価総額で世界第4位につける証券取引所により、中国一のインターナショナルポートとして君臨しています。 その歴史的背景やインフラ発展の結果、総人口は東京の2倍近く、ロンドンの約3倍に当たる2400万人を超え、そのうち40%にのぼる960万人が中国のその他都市、または海外からの移住者です。さらに現在、約30万人もの日本人も在住しており、上海は多様で友好的な人口構成を成しています。

上海エコシステムの特徴

上海は絶え間ない貿易と取引により、経済のみならず、国際的な文化、イノベーション思考に恵まれた人材が集約するビジネス都市として進化を遂げ、最先端技術やテクノロジーに敏感なグローバル企業を長年魅了してきました。 2019年の上海への株式投資は、1749件で270億円を記録した上、活発なエコシステムを背景に、中国発のユニコーンのうち、5社に1社の割合を占める計34社が上海から誕生しています。有名どころでは、医用画像を開発するUnited Imagingや、e-commerceプラットフォームのLittle Red Book (Xiaohongshu)、ネット金融サービスの Lufaxなどがあります。 さらに国際研究所やトレードショーの数でも中国一を誇っています。China Exhibition Association発表のレポートによると、上海ではConsumer Electronics Show (CES), China International Import Expo (CIIE)、Mobile World Congress (MWC)をはじめとする計767の展示会が開催され、その数は北京で開催される365回の倍以上にのぼりました。

上海在企業のイノベーションストラテジー

上海のグローバルな繋がりは、国際的な競争とイノベーションへの多様なアプローチをもたらしてきました。ここで、上海に拠点を置くグローバル企業のイノベーション戦略をいくつかご紹介します。このような大手企業の戦略に目を向けることで、日本企業もインスピレーションを受けることができるのではないでしょうか。 Sanofi ChinaでGeneral Managerを務める Pius S. Hornstein氏は、昨年11月に開催したthe Sanofi Innovation Summit in Shanghaiにおいて、新しいテクノロジーの発展がビジネスの焦点を混乱させる脅威となる可能性について指摘しました。その中で、サノフィのイノベーションにおけるフォーカスは新技術でなく、あくまで患者にあると明言し、患者自身、また彼らが必要とする改善・解決策に焦点をおいた技術発展に同社の経験やタレントを提供することで、今後20-30年も乗り切ることができると考えています。 一方、ビールで有名なBudweiserは、消費者でなく、ビールが消費される場にフォーカスを置いています。今回著者が訪れた中国交通大学(Shanghai Jiaotong University)内にあるイノベーションスペースYuan Coffeeにおいて、Budweiserはアジアの飲み文化からインスピレーションを見つけるため、エンジニアが一定期間、集中的にプログラムの開発やサービスの考案などの共同作業を行い、アイディアを出し合い競うイベントを開催しました。そこに参加したチームが、市場にすぐ出せるような飲みの場で楽しめるバドワイザーボトルを活用したゲームを作り出すなど、イノベーションに繋がるアイディアを次々と生み出しました。同社はこのように、素早く、低コストにイノベーションを生み出すことが、時代やトレンドに乗り続けるための秘訣だと言います。 イノベーション戦略がサプライチェーン全体に及ぶこともあります。その例として、Fung Groupは、サプライチェーンに活用できる技術にフォーカスを置いたイノベーションハブExploriumを上海に設置しています。同ハブは、Fung Groupが長年培ってきたサプライチェーンとリテールの経験や知識を活かし、スマートサプライチェーンを実現する技術やアイディアを提供し、同業界に革新を起こしています。同社副社長のPaul Wong氏は以下のように語りました。「弊社は、リテールラボが顧客の行動やプロダクトの動きを追跡、把握するため、RFID関連のスタートアップと協業するなど、先駆的な実験を行なってきました。その結果、明らかなベネフィットが得られると知ったFung Groupのサプライチェーンが皆、このような新しい技術に取り組むべきだと感化されたのです。」

オープンイノベーションの対象としての上海

タレントや技術へのアクセスだけでなく、新しいコンセプトに対するそのオープンで友好的な姿勢により、上海は多国籍企業がイノベーションを求めるには好ましいエコシステムと言えます。 また、それ以外でも同都市には簡易な市場検証を実施するための柔軟な資源が豊富です。イントラリンクは、新商品のコンセプト考案、早期アイディアやプロトタイプの市場検証から、既存製品の改良及び新しいビジネスモデルやソリューションを創造するためのテクノロジースカウティングまで、様々なプロジェクトに取り組んでいます。 今まで多くの多国籍企業を魅了してきたエコシステムを有しているだけでなく、彼らのオープンイノベーションプログラムの目的地となってきた上海は、日本企業にとっても新しいビジネス、オープンイノベーション活動にチャレンジしやすい環境なのではないでしょうか。上海のエコシステムにご興味がございましたら、ぜひイントラリンクinfo@intralink.co.jpまでお声掛けください。 著者について Emma Hsuは、台湾出身、カナダ育ちの中英バイリンガルで、10年間カナダで就労していた経験がある。現在はイントラリンク上海オフィスで、オープンイノベーショングループのプログラムマネージャーとして活躍している。

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