弊社の最高経営責任者(CEO)を務めるグレゴリー・サッチが、日本企業がなぜ、このタイミングでデジタルトランスフォーメーションを実行し、より近代的で機敏な、コスト効率の高いビジネスに方向転換していくべきなのか、自らの経験をもとに以下解説しています。
「The new normal」への適応
現在、多くの人がテレワークでも業務をこなし、また会議のためにわざわざ客先に出向かなくても、ZoomやMicrosoft Teamsで「対面」面談ができている、という「The new normal(新たな通常)」を体験していませんか。また出張にかかる旅費をはじめとする全体の出費も減っているのではないでしょうか。 このコロナショックで多くの企業が影響を受けている中、重要なのは、ただコストを削減していくだけではありません。この危機を乗り越え、その後に更なる成功を収めることができるかどうかは、資金力だけではなく、新たな環境へ適応するためのアジリティ(機敏性)に大きく左右されるのではないでしょうか。 私の知り合いで、ほぼ毎月のように現地視察のためアジアに出張に行っていた欧州企業の取締役は、飛行機はもちろんビジネスクラスで、現地でも贅沢なホテルに滞在するだけで、特に何かを達成することもなく、いつも出張を終えていました。 このような例を筆頭に、付随して発生する費用はもちろんのこと、貴重な時間の無駄使いなど、多くの組織幹部が必要のない出張に行っているケースが多いのではないかと私は感じています。実際には、現地の有能社員との定期的な電話会議とコミュニケーションで、彼らに問題なく仕事を任せることができるのではないでしょうか。 つまり、多くの企業幹部は、新たな取り組みや事業展開に関わる業務、または単に家族と過ごすなど、他の重要な部分に彼らの(高価な!)時間を費やすことができるはずです。
生産性の向上
また、このように多くの人がテレワークでの勤務が可能なのであれば、この時間と資金の無駄使いは毎月高額の経費が費やされているオフィススペースにも共通しています。その上、従業員の通勤時間が減るということは、福祉や環境面にも変化をもたらし、その結果、彼らの生産性向上にも繋がります。 だからこそ、コロナショック後の世界でどのように競争していくべきか、という問いに真剣に取り組んでいる企業経営者や幹部に向けた私からのアドバイスは、「デジタルトランスフォーメーションの推進」です。 言い換えると、企業はデジタル技術を活用して、製品やビジネスモデルだけでなく、組織そのものや企業文化を変革することで、競争上の優位性を確立することができるようになる、ということです。 当たり前のことに聞こえるかもしれませんが、私は今日、ある大企業の部長が基本的なビデオ会議にすら参加できないという状況に遭遇しました。 このような経験から、オフィススペースへの出費や出張などの旅費を削減する一方、テレワークそのものや、組織内外の人と情報への容易なアクセスを可能にするデジタルツールに注力することの重要性を感じています。
デジタルトランスフォーメーションへの方向転換
これはまた、企業がより進んだ戦略を採用することを意味しています。つまり、国内外に関わらず、従業員全体により大きな責任と説明責任を与えることになります。 この先数ヶ月、または数年にかけて、デジタルトランスフォーメーションを中心とするイノベーションが、ビジネスの存続と繁栄のため、今までになく重要になっていくでしょう。 だからこそ、この機会にデジタルトランスフォーメーションを推進し、より近代的で機敏な、コスト効率の高いビジネス、つまり、コロナショック以降も長期的な成功を収め続けることができるビジネスを展開するべきなのです。 著者について グレゴリー・サッチ(Gregory Sutch) 1997年、2003年にまず日本と中国で、その後韓国と台湾で、イントラリンクの各国事業を立ち上げた。英国帰国後、2010年に最高経営責任者(C E O)に就任し、現在もオックスフォード本社を拠点に、世界12拠点にまで拡大したイントラリンクを率いている。日本の地方自治体や、日本航空のマーケティング部門での業務に従事していた経験もあり、日本語が流暢。