『Neural Concept2,700万ドル調達、EV設計期間を18カ月に短縮』、『蘭BioBTX、初の商業向け循環型芳香族プラントへ8,000万ユーロ獲得』、『富士フイルムBI、欧州でCircular Manufacturing Centerを設立』、『リアルタイム請求書決済に革新、Solutions by Textが1.1万ドル調達』、『中小企業向けフィンテックRelay、3,220万ドル調達』、『AI活用のがん治療予測ツール開発Valar Labs、2,200万ドル調達』、『Google、データセンター建設完了で対シンガポール投資50億ドル到達へ』、『リプロダクティブ・ヘルスのRhea、1,000万ドルを追加獲得』を取り上げた「イノベーションインサイト:第86回」をお届けします。
AIによりEV設計の時間とコストの削減を目指すスイスのスタートアップNeural Conceptは、シリーズBで2,700万ドルの資金調達を行ったと発表した。EPFLからのスピンオフとして2018年に設立された同社は、データサイエンティストやエンジニアの製品設計やシミュレーションを支援する3Dディープラーニング・アルゴリズムに基づくプラットフォームを提供しており、これにより、製造前に部品の挙動や性能をモデル化できるという。Neural Conceptは、このソリューションによって開発期間を最大75%、製品シミュレーションを最大10倍短縮できると主張しており、EVの開発期間を従来の4年間から1年半に短縮する可能性があるという。この技術は自動車分野に留まらず、エレクトロニクス、航空宇宙、エネルギー分野にも応用可能である。現在、同社の製品は Airbus、Bosch、General Electric、Subaruなどに採用されている。今回の資金調達により、Neural Conceptは欧州、アジア太平洋地域、米国へのさらなる進出を目指す。
オランダの BioBTX 社は、8,000万ユーロを超える新たな資金を確保したと発表した。この資金調達には、Covestroなどの投資家からの4,200万ユーロの出資と、オランダ政府からの約1,400万ユーロの補助金が含まれる。2012年に設立された同社は、プラスチック廃棄物やバイオマスを、持続可能な芳香族(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)に変換するソリューションを開発した。これらの芳香族は、断熱フォーム、コーティング剤、ペットボトル、電池、医薬品など、日用品の製造に使用される。同社は現在、Covestroや帝人などの企業と提携している。2022年、BioBTXは1時間当たり100グラムを処理できる最初のパイロットプラントを建設した。今回の資金調達により、同社は年間2万トンのプラスチック廃棄物を再生可能な芳香族に変換できるプラントをオランダに建設する予定である。生産が成功すれば、BioBTXは世界的な拡大を目指す予定だ。
富士フイルムビジネスイノベーションは、欧州での資源循環活動を強化するため、オランダに「Circular Manufacturing Center」を設立した。このセンターは、FUJIFILM Manufacturing Europe B.V.内に所在し、欧州で販売されたプリンターの使用済みトナーカートリッジをリサイクルすることから活動を開始する。これらのトナーカートリッジは回収、分解、清掃、検査の後、新しいトナーカートリッジとして再製造され、欧州地域で再出荷される予定である。将来的には、この再製造プロセスを多機能プリンターや生産プリンターのスペアパーツなど、他の製品にも拡大する計画がある。同社による持続可能な取り組みの例としては、FUJIFILM Manufacturing Europe B.V.が利用する全ての電力を、敷地内で生産された再生可能な風力エネルギー、および風力発電業者からの購入分で賄っていることが挙げられる。今回の取り組みは、大企業におけるリサイクルと再製造への関心の高まりを示し、循環型経済の促進に寄与している。
銀行、信用組合、自動車ローンなど消費者金融事業者向けに構築された、コンプライアンス準拠のメッセージングおよび決済ソリューションを提供するSolutions by Text (SBT)は、Edison PartnersとStepStone Groupの共同出資による最新資金ラウンドで1億1,000万ドルを調達した。スマホを介したテキストメッセージは消費者にとって身近なコミュニケーション手段だが、金融規制当局や通信事業者ネットワークの厳しいビジネス要件にはマッチしていない。現状として消費者(特にZ世代やミレニアル世代)は、延々と続くEメールやコールセンターとのやり取り、分かりにくいウェブポータルなどに代わるものを求めている。このギャップを埋めるべく、SBTのプラットフォームFinText™は、消費者には簡単かつ便利にテキストで支払うことを可能にし、融資提供側には、コンプライアンスを第一に考えたアプローチで、融資、マーケティング、売掛金などのユースケースにおいて、プロセスを効率化する。2023年、SBTのメッセージング件数は前年比95%増となり、メッセージング件数は2倍以上に増加する勢いだ。
トロントを拠点とするRelayは、既存投資家のBain Capital Venturesが主導するシリーズB資金調達で約3,220万ドルを調達した。同社は、バックオフィスシステムとの統合により財務機能を自動化するよう設計されたビジネスバンキング・ソフトウェアプラットフォームを通じて、中小企業のキャッシュフロー管理を提供する。主に中小企業の財務の可視性と安全性を高め、管理に費やす時間を削減することで、小売やeコマース、非営利事業、貿易、不動産などの分野で、全米の中小企業雇用主を支援している。Relayの金融商品には、当座預金や普通預金口座があるほか、連邦預金保険機構(FDIC)のメンバーであるThread Bankとの提携によるクレジットカードの発行も開始した。その他の機能としては、買掛金や領収書の管理も提供している。景気後退の影響を受けカナダのテック企業が軒並み人員削減などでコスト削減を進める中、Relayは2024年末までに従業員数を200名ほどまで増員する計画だ。
膀胱がん患者に対するBCG膀胱内注入療法の画像モデルと臨床モデルの構築に多くの労力を費やしてきたバイオテックValar Labsが、新たながん領域への拡大で2,200万ドルを調達した。がん患者は明確な治療計画を持っていないケースが大半で、選択肢はあるが、何が効果的かを予測するのは難しい。Valar Labsの狙いは、十分な情報に基づいた決断をサポートするという点だ。例えば、膀胱がんの治療では、標準治療が効くとされる患者は2人に1人しかいない。どれが本当に効くかを知る方法があれば、意味のない治療で1年を無駄にする必要はなくなる。同社初のテストであるVestaは、この点に焦点を当てている。がん患者から採取した何千もの組織学的画像で訓練された視覚的AIで罹患した組織の断面「スライス」がスキャンされ、専門家によって検査される。この超高解像度画像は、腫瘍の細胞レベルで何が起きているのかについて多くを語ることができるため、これら画像コンポーネントは膨大なデータで訓練され、多くの領域や癌に適用できるという。
Googleは月曜日、シンガポールにおける最新のデータセンターとクラウドキャンパス拡張完了を発表した。 このマイルストーンにより、同社の同国における技術インフラへの投資総額は、2018年の8億5,000万ドルから50億ドルに達したと述べている。500名以上が働くシンガポールのGoogleデータセンターは検索、マップ、ワークスペースといったグーグルの人気デジタルサービスを支える技術インフラであり、シンガポールを含む、世界中の何十億もの人々や組織が毎日利用している。また、GoogleがAlサービスをシンガポールのユーザー・企業に提供する上で不可欠な役割を担っているという。なお、シンガポールは、現在Googleがデータセンターを運営している11カ国のうちの1つである。
現在、出生率は多くの国で低下しており、不妊率は上昇している。この問題に対処するため、シンガポールとニューヨークを拠点とするリプロダクティブ・ヘルス・サービス・プロバイダーのRheaは、グローバルなバリューチェーンの橋渡しとテクノロジーの活用に注力している。先日、Rheaはサービス拡大を続けるために1,000万ドルの資金を確保したと発表した。今回の資金提供は、前回も出資したThiel Capitalが主導している。この資金を活用し、Rheaは2024年にさらに多くのクリニックを買収し、新たな市場でサービスを拡大する計画である。また、生殖医療専門家チームを拡充し、世界中で高品質な不妊治療の標準を確立することを目指している。現在、同社は12の市場で380人以上のスタッフを擁している。Rheaのエコシステムは、自社および提携クリニックのグローバルネットワークであるGenPrime、データ活用で市場投入を迅速化し、質の高いフィードバックで患者転帰を向上させる統合技術プラットフォームRhea Labs、そして包括的な生殖医療サービスを提供する各種ウェルネスパートナーで構成されている。
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