『Flo Healthが2億ドル超調達、初のフェムテック・ユニコーンに』、『スイスNEMATX、日本のPOLYPLASTICSと提携』、『仏Gourmey、EU初の培養肉販売申請を提出』、『Astranis、次世代衛星計画Omegaに向け2億ドル調達』、『Third Arc Bio、がん治療に向けた生物製剤開発で1億6,500万ドル調達』、『Monarch Tractor、農業ロボットにおけるマイルストーンとなる資金調達』、『GRAB、星ダイニング予約プラットフォームCHOPEZを買収』、『Tech Data、シンガポールと香港で Equinix と販売提携』を取り上げた「イノベーションインサイト:第94回」をお届けします。
英国フェムテックスタートアップのFlo HealthがシリーズCラウンドで2億ドルの資金を調達した。これにより同社の評価額は10億ドルに達し、ユニコーン企業の仲間入りを果たした。2015年に設立された同社は「最もダウンロードされている女性向け健康アプリ」とされ、ユーザーの不妊症や生理の追跡をサポートしている。症状のモニタリングや予測に加え、120名以上の医師や専門家がユーザーごとにカスタマイズされた洞察やアドバイスを提供しており、優れた予防ケアの提供とユーザーの知識レベルの向上に貢献している。現在、このソリューションの月間アクティブユーザー数は7,000万名以上、有料会員数は約500万名に達している。同社の従業員数は全世界で約500名、2023年の売上高は1億1,200万ドルであり、2022年の3,500万ドルから大幅に増加している。Floは今回調達した資金を活用し、更年期障害やそれに関連する新たなユーザー層への拡大を図るとともに、AIを活用したパーソナライズド・インサイト・ツールの研究開発に投資する計画である。
スイスの3DプリンティングスタートアップであるNematXは、高性能ポリマーの産業用3Dプリンティング事業加速のため、日本のPOLYPLASTICS(ダイセルグループ傘下)との提携を発表した。NEMATXは2020年にETH Zurichのスピンオフ企業として設立され、ポリマー3Dプリンティング・プラットフォームと液晶ポリマー(LCP)材料を提供している。これらのソリューションはエレクトロニクス、航空宇宙、またヘルスケアなどに応用されている。同社は2023年に製品の販売を開始し、エレクトロニクスや半導体業界のアジアや米国の大企業を中心に30社以上の顧客を獲得した。これにより、NEMATXは100万スイスフランに近い収益を達成することができた。今回のパートナーシップは、POLYPLASTICSの先端ポリマー材料における経験とNEMATXの3Dプリンティング・ソリューションを融合させるもので、NEMATXのグローバル進出を支援するものとなる。両社はまた、製造プロセスの持続可能性を高めるため、環境に優しい材料の開発や廃棄物・エネルギー消費の削減方法についても協力していく。
フランスのフードテックスタートアップであるGourmeyは、培養肉をベースにしたフォアグラの認可申請を英国とEUの規制当局に提出した。これは、EUの欧州委員会に提出された培養肉の販売に関する初の新規食品申請であり、承認されれば、同社の製品はEU全27カ国で販売可能となる。なお、Gourmeyはスイス、シンガポール、米国でも申請を行っている。2019年設立のGourmeyは、細胞培養を利用してフォアグラ(最初の申請対象)を含む様々な製品を生産しており、その他の種類の鶏肉も生産している。パリに46,000平方フィートの商業生産施設を建設するためにシリーズAで4,800万ユーロを調達するなど、これまでに合計5,300万ユーロを調達している。欧州では、人間用の培養食肉製品の承認を獲得した企業はまだ存在しないため、今回のニュースは同業界内でのインパクトが大きい。また、これは英国スタートアップのMeatlyが、英国でペット用の培養鶏肉の規制認可を取得した数週間後に行われたものであった。
Astranis は、2026年打ち上げ予定の次世代衛星プログラムOmega実施のために、シリーズDラウンドで2億ドルを調達した。同社は静止軌道であるGEO向けの小型ブロードバンド通信衛星を開発・運用している。MicroGEOと呼ばれる第一世代衛星を打ち上げ、米国やメキシコなどの現地通信事業者に通信容量を販売している。4月に発表されたばかりのOmegaは小型で通常の5倍の帯域幅を提供する。航空電子工学システムおよび機械的・熱的性能の向上に加え、軌道上での寿命延長も実現した。同社は2025年に24機の衛星を製造する計画であり、これは静止軌道で運用される衛星としては前例のない規模である。静止衛星運用事業者にとっては、電力とサイズ両方の需要に対応するため、何年もかけて衛星1機を製造するのが常だが、同社では部品の7割を自社製造で賄うことで、この製造スピードを実現可能にしている。
Third Arc Bioは、がんや炎症性疾患、免疫介在性疾患のための多機能抗体ポートフォリオを開発し、Vida Ventures、Cormorant Asset Management、Hillhouse Investmentが共同主導したシリーズAラウンドで1億6,500万ドルを調達した。フィラデルフィア拠点の同社は、T細胞を活性化または抑制する免疫シナプスを作るように設計された多機能抗体を専門とし、この技術を用いて固形がんや炎症・免疫疾患(I&I)に対する新規治療法を開発している。同社を率いる Peter Lebowitz は、以前ジョンソン・エンド・ジョンソンでがん研究開発のグローバル責任者を務め、FDAから13の医薬品承認と13の画期的治療薬指定を獲得した経験を持つ。今回の資金は、T細胞生物学を活用した大胆な新治療法開発のための治験薬申請のために使用され「最高レベルの生物製剤」ポートフォリオを推進するという同社のミッションを後押しする。Third Arcが現在進める複数のプログラムは、2025年初頭から臨床に入る予定だという。
自律走行トラクターMK-V、並びにインテリジェンス農場管理プラットフォームを開発するMonarch Tractorは、シリーズCラウンドで1億3,300万ドルを調達した。米国では、農業の収益性が過去10年間で着実に低下する中、米国食品医薬品局(FDA)によると、2023年は業界史上最も急激に低下した年となった。ロボット工学とAIは農業にとって比較的新しいものだが、Monarch Tractorは、この市場の潜在的成長を利用したデジタル・ディスラプションの最前線に立つことを目指す。同社にとって農業は、地球上で最も重要かつ見過ごされている分野であり、農業関係者は、農場の収益性、労働力不足、データの入手可能性、サステナビリティに関する徹底した精査など、重大な課題に直面していると主張している。Monarch Tractorが取り組むAIの応用とスマート・プラットフォームの導入は、農家に強固な社会的、経済的、環境的リターンをもたらすと期待されている。
シンガポールを拠点とするライドシェア大手 Grab Holdings Ltd は、シンガポールのレストラン予約アプリ Chope を買収し、サービスのポートフォリオをディナー予約に拡大した。未公表のこの取引により、Grabはシンガポール、インドネシア、タイを含む東南アジア全域で、GoTo GroupやLine Man Wongnaiなどの競合他社に対し、より競争力の高い自社サービスを展開できるようになる。予約サービスで高いシェアをもつChope は、今後 Grab のオムニコマース部門で運営され、そのチームは Grab のオフィスに統合されることとなる。同社はシンガポールやバンコクを含む7都市で引き続き営業しており、今後もGrab傘下でサービスを提供する。この買収は、同地域のフードテック業界における激しい競争の中で、持続可能な成長と利益率の向上を目指すものである。
TD SYNNEX社の子会社であるTech Dataは、グローバルなデジタルインフラプロバイダーである Equinix との販売提携を発表し、シンガポールと香港において Equinix のソリューションを提供する初のディストリビューターとなった。これにより、Tech Dataはハイブリッドマルチクラウドソリューションの提供能力を高め、企業が安全で拡張性の高いデジタルインフラを構築するのを支援できるようになる。Tech Dataは、仮想相互接続サービスであるEquinix Fabric®とEquinix のデータセンターサービスを配信する。この提携は、複雑なインフラを簡素化し、統一されたグローバルプラットフォームを提供することで市場のギャップに対応することを目指している。また、Tech Dataのマネージドサービスパートナーが Equinix のソリューションを統合して共同販売することで、継続的な収益源を増やしていく計画だ。この動きは、Tech Dataのポートフォリオ強化およびグローバルレベルでのDX強化を支援するという戦略に沿ったものである。
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