『エストニアのUP Catalyst、バッテリー関連技術で資金調達』、 『住友電工、アイルランドと英国間の送電システム建設プロジェクト完工』、 『英Sunswap、排出ゼロの冷蔵輸送で2,000万ユーロ調達』、 『Fortera、低炭素セメント事業拡大に向け8,500万ドル調達』、 『小惑星着陸ミッション打ち上げを目指すAstroForge 、4,000万ドル調達』、 『体温感知技術のButlr、3,800万ドル調達』、 『星SleekFlow、対話型AI技術で700万ドルを調達』、 『RateHawk、アジア進出でベトナムと日本市場向けにB2Bプラットフォームをローカライズ』を取り上げた「イノベーションインサイト:第98回」をお届けします。
エストニアのスタートアップUP Catalystは、持続可能な炭素材料の生産において革新的な技術を開発している。同社は、Warsaw Equity Groupおよびエストニアの国家ファンドである SmartCapから236万ユーロのシード資金を調達し、事業拡大を図る。これは、2023年12月に実施した400万ユーロのシードラウンドに続くものである。同社はUniversity of Tartuからスピンアウトした企業であり、水素燃料電池ドローンメーカーのSkycorpや、自律走行シャトル開発企業のAuve Techなど、エストニアの有力スタートアップと協力して事業を展開している。溶融塩電解法を用いて二酸化炭素をカーボンナノチューブやグラファイトに変換し、バッテリーや塗料、コンクリートなどの用途に利用している。今回の資金調達により、年間100トンの二酸化炭素を処理し、27トンの先進的な炭素材料を生成するパイロット反応炉の商業化が進められる予定だ。同社の主要なターゲットはバッテリー業界であり、特に負極にカーボンネガティブなグラファイトを使用することで、2030年までに年間118.7メガトンのCO2排出を回避できる可能性があるとしている。
住友電気工業株式会社は、アイルランドと英国ウェールズ間を結ぶ高圧直流(HDVC)および光ファイバー接続を確立するGreenlink Interconnector Projectを完了した。このプロジェクトは、最大38万世帯に電力を供給し、接続された送電網への再生可能エネルギー源の統合を促進する、重要なエネルギーインフラ構想である。同社は、アイルランド国内で24km、ウェールズ内で6km、そしてアイルランドと英国の電力網を結ぶ160kmにわたる海底ルートに、先進的なHDVC架橋ポリエチレンケーブルを製造・設置した。このプロジェクトのエンジニアリング、調達および建設は、Siemens Energyと提携し、共同で進められたものである。今後数か月にわたり、追加試験およびケーブルシステムの作業が行われ、これらはSiemensに引き継がれる予定である。
英国拠点のクリーンテックスタートアップSunswapは、最新の資金調達ラウンドでBGFを主導投資家として2,000万ユーロ以上を調達した。このラウンドには、Shell Ventures、オランダのVCであるMove Energy、そして既存の出資者であるBarclaysやClean Growth Fundも参加している。この資金は、冷凍冷蔵物流業界の脱炭素化を目指すSunswapのゼロエミッション輸送用冷凍ユニット(TRU)の開発を加速させるために活用される予定である。Sunswapの革新的なソリューションは、先進的なバッテリー技術、屋根に取り付けられたソーラーパネル、そして急速充電機能を組み合わせることで、ディーゼル車からの移行をスムーズに行いながら、従来のシステムと同等の性能を提供する。また、運行事業者に対しては、車両群のモニタリング用テレマティクスシステムを通じて、コスト削減と投資対効果の最適化が可能となる。今後、Sunswapは、低排出の大型輸送ソリューションへの需要が高まる欧州全域において、生産規模を拡大する計画である。
米国エネルギー省のレポートによると、セメントは世界で最も広く使用されている材料のひとつであり、年間150億ドル規模に及ぶこの産業は、世界のCO2排出量の約8%を占める。Khosla VenturesとTemasek主導のシリーズC資金ラウンドで8,500万ドルを調達したForteraは、生産過程で大量のCO2を排出さるセメント業界に対し、革新的な解決策を提供している。 同社はセメント製造の初期段階で排出されるCO2を、自社施設内にある反応器に送り込み、独自の炭酸カルシウムから生成される「反応性炭酸塩」と化学的に結合させる。その後、精製を経て鉱化されたCO2を含む同社のReActグリーンセメントが完成する。この新型セメントは、大気中に排出されるはずだった炭素を回収・利用するもので、業界標準のセメントに比べてCO2排出量を70%削減できる点で、持続可能なプロダクトとして注目を集めている。
宇宙採掘スタートアップのAstroForgeは、Nova Threshold主導のシリーズAラウンドで4,000万ドルを調達し、これまでの総調達額は5,500万ドルに達した。同社は、小惑星から資源を抽出し、資源の補充も行うことで、地球の未来を守る費用対効果の高いサステナブルな採掘ソリューションを計画している。同社は現在、「Vestri」と呼ばれるミッションの打ち上げを計画中であり、来年にはIntuitive Machinesによる月着陸ミッションのライドシェア輸送機として探査船を打ち上げる予定である。この探査船は、指定された小惑星に接近し、200キロの重量でドッキング後、小惑星の表面に着陸する計画だ。そこで、抽出可能な貴金属の定量化を含むさまざまな調査を実施することになっている。AstroForgeによれば、これは地球や月以外の天体に着陸する初の民間ミッションとなり、人類が地球外の資源にアクセスするための一歩を踏み出すものとなる。この資金調達により、同社は深宇宙で小惑星物質を精製する技術をさらに発展させることが可能となる。
MITメディアラボからスピンアウトしたButlrは、シリーズBラウンドで3,800万ドルを調達し、あらゆる建物で使用できるセンサーと匿名データへの需要の増加に応えようとしている。同社は、人々が働き、生活する建物において、よりエネルギー効率が高く安全な環境を実現することを目指している。Butlrは体温感知技術と機械学習を組み合わせた特許取得済みのセンサーを開発しており、これらのセンサーは磁石で壁や天井に取り付けることができる。これにより、建物内部の空間利用状況に関する洞察が得られる。また、Butlrのセンサーは100%匿名性を保証しており、個人を特定できる情報を取得しないよう設計されている。取得される初期データは温度のみで、これが人の姿勢や屋内位置、占有率に変換される。現在、ButlrのセンサーとデータはWalmartやVerizonを含む多くの企業で既に使用されており、今回の資金調達を通じて、同社は高齢者介護コミュニティへの展開をさらに拡大する計画である。
シンガポールを拠点とするオムニチャネル会話型AIプロバイダーのSleekFlowは、韓国のAtinum Investmentが主導するシリーズA+ラウンドで700万ドルを調達し、総資金調達額は1,500万ドルに達した。2022年に設立されたSleekFlowは、主に保険、ヘルスケアおよび小売業界向けにAI駆動型の顧客エンゲージメントソリューションを提供している。今回の資金調達により、同社は東南アジア、中東、ヨーロッパへのグローバル展開を加速させ、通話やメールの統合を含むAI技術の革新を進める予定である。SleekFlowのソリューションは、顧客とのやり取りを直感的な単一のインターフェースで管理することで、業務の効率化を図ることができる。また、同社は今後12か月以内にシリーズBの資金調達を行い、グローバルなテクノロジー企業としての地位を一層強固にすることを目指している。
ドバイ拠点の旅行業界向けB2B予約プラットフォームRateHawkは、ベトナムと日本市場向けに完全にローカライズされたプラットフォームを新たに立ち上げた。このプラットフォームでは、ベトナム語と日本語に対応した検索ページ、予約フォーム、通知機能が利用可能となり、現地パートナーにより高品質なサービスを提供することが可能となる。これは、2024年6月にシンガポールに初の地域本部を設立したのに続くもので、アジア市場でのさらなる拡大を図るRateHawkの戦略の一環である。同社のプラットフォームはすでに27の言語に対応しており、150か国で260万軒以上の宿泊施設を含む、航空券やレンタカー、送迎サービスも提供している。同社は、2016年にEmerging Travel Groupによって設立され、現在、世界中で500人以上の専門家を雇用し、80,000以上の旅行パートナーにサービスを提供している。今回のローカライズによって、RateHawkはアジア市場でのプレゼンスを一層強化し、現地市場に適した高度な予約ツールを提供することを目指している。
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