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海外イノベーション連携のコツ:成功企業を選ぶための10のチェックリスト

私たちは、海外スタートアップとのコラボレーションや投資を行う多くの日本企業から、Winners(成功企業)を選ぶチャンスを最大化すると同時にLosers(失敗企業)を回避する方法や、提携においてリスクを軽減する方法についてよく聞かれます。具体例としては、気をつけるべき事項についてある種のチェックリストはありますか、という質問をよく耳にします。 そこで今回は、弊社の経験から日本企業が海外イノベーション連携の成功を目指す際に気を付けるべき事項をリストアップしてみたいと思います。 By Greg Sutch, CEO, Intralink Limited

Are you ready?

私はまず初めに、『準備は出来てますか?』という質問を投げかけます。つまり、明確なイノベーション戦略、経営陣の賛同、海外スタートアップと仕事をするにあたって十分な英語力と経験を持つ優秀な人材と予算を確保できる主要ビジネスユニットが既に存在しているか、ということです。また適切な人材がいない場合、外部パートナーとの連携でその穴を補うことができるかどうかも確認するべきでしょう。

チェックリスト

もちろん、過去の協業経験などその背景や能力は組織によって異なるため、海外イノベーションにおいてすべての企業にうまく該当する完全なチェックリストは存在しません。 しかし、弊社は過去30年に渡って日本企業と海外企業のコラボレーションを実現させてきた経験をもとに、出発点として最適な『10の必須事項』をまとめたリストを作成してみました。このリストなら、ほとんどの不測の事態もカバーすることができるはずです。

トップ5

Market:ターゲット市場 既に何度も検討を重ねたことがある点でも、恐らくもう一度自身に問いかけてみる価値がある質問でしょう:貴社製品と進出市場の適合性はありますか?その製品は正しい顧客層を引き付け、ターゲット市場で正しく機能しますか?その市場サイズは十分な大きさですか?調査の一環として、私は常に協業候補企業の既存顧客、または潜在顧客と直接話をするように心がけています。 Technology:技術 スタートアップが開発する技術の多くは、実際にまだテスト・検証されていないことがよくあります。そのため、まずその技術がきちんと機能するかを確認することが重要です。 ほとんどの企業がPoC(実証実験)を行い、そして可能であればスタートアップの顧客と直接話をし、さらに彼らとの内部及びフィールドテストを実施することになるでしょう。  Business Model:ビジネスモデル スタートアップの創設者は過去の経験に基づいてビジネスモデルを決定することがよくあります。しかし、それは果たして今展開している製品やターゲット市場に適しているのでしょうか?彼らが提示する数値は現実的ですか?また証明されていますか?競合企業の活動の調査を行い、採用と技術に関する指標を確認することで、結果によっては代替・補完ビジネスモデルを提案するのもありなのではないでしょうか。 Competition:競合他社 あなたが知らないよりレベルの高い、強力な競合企業は存在していますか?その把握をした上で、他社の製品と比較して、自社製品が十分に差別化されているかどうかを確認する必要があるでしょう。提携するスタートアップの競争戦略を観察し、差別化を促進するためにリソースを提供したり、さらには競合企業との協力さえ検討できるかもしれません。 Team:チーム 創設者は今までどのような実績を残してきましたか?彼らは適切な経験を持っていますか? そして、国際ビジネスとして貴社のような大きな組織と提携するスキルを持っていますか? この点に関しては、彼らの経歴や過去のプロジェクトに関するバックグラウンドチェックを行いましょう。そして、職業的な環境だけでなく、社交の場でも彼らと時間を過ごすようにしてください。また、専門知識を提供した上で、リーダーシップの変更を検討する必要があるかもしれません。

その他の考慮事項

最も重要と言える上記5つの項目に加え、幅広いデューデリジェンスの一環として、次の5つのリスク領域についても検討する必要があるでしょう。 Operational:オペレーション 運用上のリスクを検討するときは、企業の内部システムとその拡張能力、及び人事戦略が重要になってきます。彼らは今後、その才能と能力を維持するだけでなく、向上させることができるか?さらに彼らはどのようにしてその他の人材を育成し、さらに新しい才能を引きつけるのか、などが例として挙げられます。 Intellectual property:知的財産 その会社は商標を登録し、特許を取得していますか?そして、それらの特許は独自技術としてどれほど強力で、防御可能ですか?そして、同社が商標や特許侵害で訴えられるリスクも考慮が必要な事項です。 Solvency:資金・支払能力 他のスタートアップと同じように、貴社が興味を持っている企業も成長のため、資本が必要になります。破産リスクを評価するには、ビジネスプランから「資金の回転率」を見ていく必要があります。またベンチャーファンド、助成金、借金などこれまでにどのように、どのくらいの資金を確保したか、そして将来の資金調達計画も把握しておくべきでしょう。 Environmental:環境 貴社が協業を検討するスタートアップが持つ技術や製品が、環境にどのような影響を与えるのか。良くも悪くも、その影響は貴社の環境ポリシーに適しているか、また国内及び国際的な規則や規制に準拠していますか?さらに、より環境に優しい形に改善する方法はありますか? Political:政治 最近の貿易戦争、さらには実際の紛争に起因する政治的リスクを理解し、またそれらのリスク軽減を考慮することも重要です。例えば、合弁会社を設立したり、「より安全な」管轄区域に法人を設立することを検討するべきかもしれません。  

対応・管理されたリスクは、『No Risk』よりもベターである

現在、地球上どこを探してもアイデアを独占している国はありません。そのため、日本企業はオープンイノベーションにおいて、「ベストフィット」な、各企業に最適である最新技術を特定するために、グローバルな視点で欧州、北米、中国をはじめとする世界規模での活動を広げていくことが重要です。 それには、もちろんリスクが伴いますが、プロセスに従ってデューデリジェンスを実施していくことで、これらのリスクをうまく管理しながら勝者を選定し、成功企業とのコラボレーションを実現することができるはずです。 最後に一つ質問です。あなたは全くリスクを犯さずに成功するビジネスを目指す、という選択肢を選ぶ勇気がありますか? 著者について グレゴリー・サッチ(Gregory Sutch) 1997年、2003年にまず日本と中国で、その後韓国と台湾で、イントラリンクの各国事業を立ち上げた。英国帰国後、2010年に最高経営責任者(CEO)に就任し、現在もオックスフォード本社を拠点に、世界12拠点にまで拡大したイントラリンクを率いている。日本の地方自治体や、日本航空のマーケティング部門での業務に従事していた経験もあり、日本語が流暢。

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